近年の少子化の主因は、結婚しているカップルが子供を産まなくなったのではなく、適齢期の男女が結婚しなくなったためだと言われています。
しかし、統計調査の分析等から、出生率低下は、それだけではなくその他たくさんの社会的経済的要因や生物的行動的要因が複雑に関係したものであることがわかりました。
現在のところ、確実な要素を特定するのは難しいようです。
1)人口転換論
社会が近代化し、経済的に豊かになると、多産多死から多産中死を経て少産少子にいたるといわれています。これを人口転換論と言います。
発展途上の国から、先進国にいたる過程で起こる変化です。
まず、死亡率が下がります。これは食料事情による栄養状態の改善、衣類や住居による公衆衛生の改善や衛生思想の普及、医療の技術革新、予防注射、殺虫剤による伝染病の対策など多くの要素によるものです。
次に、少し期間をおいて出生率の低下が始まります。これは、理由に諸説があり、その変化の要素と相互関係は死亡率の低下よりずっと複雑です。
最終的に、出生率が大きく下がるために、少子化がもたらされることになります。
2)世界での出生率の低下
先進国諸国の合計特殊出生率(一人の女性が生涯で何人子供を産むかの指標)は、1960年代までは2.0以上の水準でしたが、1970年から1980年頃にかけて、全体として低下傾向になりました。
背景には、子供の養育コストの増大、結婚・出産に対する価値観の変化、そして
避妊の普及
などがあったと指摘されています。
1990年頃からは、国によって特有の動きをみせ、近年は回復する国も見られるようになってきました。
特に、フランス、スウェーデンでは、家族政策が功を奏し、1.6程度だったものが、2.0程度まで回復しました。
少子化は原因が複雑ですが、有効な対策を考え、実行することが無駄ではないことがわかります。
それでは、主に日本において出生率の低下した原因をみていきたいと思います。
3)結婚したくないのか?
日本の場合、未婚の出生は2%程度と、世界的にみるときわめて少ないです。
戦前は愛人を持つ裕福な男性がけっこういて、別の家庭を持つことがかなりあったようですね。現在はほとんど無いとなります。
つまり、
出生には結婚が前提
になります。
なぜ結婚しなかったり、結婚が遅くなったりするのでしょうか。
若者の価値観が変わり、結婚しないことを望む人が増えたと言われることがありますが、グラフ6を見ると、結婚したくないと思っている人は、実はそれほど多くないようです。
グラフ6(出生動向基本調査独身調査 国立社会保障・人口問題研究所 2011年)
男女とも9割程度の人は結婚するつもりがあるのに、していません。
グラフ7を見ると、特に25歳以降になると、結婚出来ない理由として
「適当な相手に巡り会わない」
と答えた人がかなり多くなるのがわかります。
結婚したいのに、「適当な相手」に出会わないことで結婚できなかったり、遅くなっているようです。
グラフ7(出生動向基本調査独身調査 国立社会保障・人口問題研究所 2011年)
それでは、「適当な相手」とはどういう人なのでしょうか?
グラフ8を見ると、結婚相手について考えるのは、男女とも人柄が多いのは当然ですが、男女差が比較的大きいところを見てみると、
男性は「容姿」女性は「経済力や職業」を望んでいる
ことがわかります。この傾向は実は世界的に共通するようです。
女性から見た場合、結婚しない(出来ない)とか、遅くなる理由には、「適当な相手」として、男性の雇用や経済状況が大きく関わっていることがわかります。
結婚相談所に登録する場合も、
男性の場合、定職に就いていることが条件
になるくらいですから、非正規雇用の状態では、結婚相談所に登録してもらうことすらできないのです。
つまり、経済が持続して停滞し、雇用環境が悪くなっていることが、現在の若者の結婚を遅らせる大きな原因の一つになっていることは確実と言えるでしょう。
グラフ8(出生動向基本調査独身調査 国立社会保障・人口問題研究所 2011年)
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