横浜保育室は横浜市が独自に基準を定めて認定した認可外保育園です。横浜市が待機児童数ゼロを達成した要因の一つとなりました。
報道等により、面積基準を緩和することによって設置数を増やしたのだろうと思っていましたが、実際はどうなのか少し細かく調べてみました。
保育面積に対する国の基準は、乳児室(はいはい前頃)1人1.65㎡以上、ほふく室(はいはい始めるころ)1人3.3㎡以上 、2歳以上児1人当たり1.98 ㎡以上となっています。
横浜保育室では、平成9年のスタート時、0〜1歳児1人当たり 2.475 ㎡以上 、2歳以上児1人当たり 1.98 ㎡以上の保育面積を確保する事としました。2.475㎡以上という面積基準は、国の基準である乳児室1人1.65㎡とほふく室1人3.3㎡を平均した単純なものです。
ほふく室の時期は緩和となりますが、乳児に関しては逆に厳しくなっています。
横浜市こども青少年局保育整備課の田中氏によると、園庭があるかないかについては緩和したが、特に面積基準を緩和したという認識はないとの事です。
国の基準では、園庭として1人3.3㎡以上の面積が必要です。
しかし、横浜市のような都心部では独自に園庭を持つ事はかなり厳しくなります。そこで、付近の公園を活用することでも良いとしました。
かなり早い時期から継続的に預ける方が増えていることを考えると、年令等による基準が異なることは、待機児童ゼロの達成を難しくしている可能性があります。
そういう意味では、現実的な対応と言えるかもしれません。
そして今年度より、0〜1歳児1人当たり 3.3㎡以上の保有面積を必要とする条例が施行されました。
今年度は、新しい基準で69園が開園します。うち39園が株式会社や有限会社によるものです。
この条例によって、横浜保育園は現在では、国の面積基準よりも厳しくなっているのです。
保育士の配置基準も国より厳しくしています。
保育士の数については、児童の年齢毎に配置基準が定められていますが、国と横浜市の基準を比較すると以下のようになります。
ただ、認可保育所の保育士は100%有資格者ですが、横浜保育室は2/3以上を有資格者にすると緩和されています。
そして、これらの基準を達成するために、横浜市は保育士の確保にも同時に力を入れています。
結婚や出産などで離職した保育士さんの掘り起こしのために、年6回の無料の就労支援講座を開催しています。新卒者向けには地方に就職担当者が出張し、横浜の魅力や保育環境についてアピールすることで、保育士確保に勤めています。
まとめると、横浜方式は、意外にも面積や保育士数の基準を緩和して保育所を増やしたとは言えません。
育児環境はそれほど犠牲にせずにきたようです。
そのことは望ましいと言えると思いますが、コスト面で言えば、やはり厳しい状況だと思われます。
保育園対策費については平成24年の157億円から平成25年は124億円に減少し、待機児童対策もとりあえず落ち着いてきつつあるとも言えます。
しかし、平成24年に677億円だった運営費は、今年は763億円に増加し、今後もさらに増える見通しです。
保育の質を検討するとき、保育園の面積の緩和についてしばしば取り上げられます。
子どもは広々とした場所で伸び伸び育って欲しい、親なら誰もがそう願うと思います。
しかし、全国の待機児童の8割が都市部に集中する中、大規模な認可保育園だけでは対応できなくなっている事も事実です。現実に待機児童があふれている中で、ある程度基準を緩和することは仕方ないでしょう。
そんな中、私の4番目の娘(1歳)は認可保育所に入れず、園庭が無く、面積基準が緩和された認証保育園に入っていますが、近くの大きな公園で走り回り、毎日楽しく通っています。
都会に住むということは、住環境が悪くなることをある程度受け入れねばならないということです。
それは、保育園にもある程度当てはまるのではないでしょうか。それでもと考えれば、今度はコストの問題が大きくなってきます。
横浜市にお話をうかがっていく上で感じたのは、まず待機児童解消の事のみを優先していて、その先にあるものに対する予想や対策はまだ全く考えられていないということです。
お話の節々に「まだそこまで考えられる状況ではない」という思いが伝わりました。
需給の予想が大変難しいことを考えると、現状では仕方がないかもしれません。需給に関しては、前回の記事で少し詳しく考えています。
横浜では、しばらくは起きてくる問題に対して、その場その場の対応が必要ということになりそうです。
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