幼児が死亡したベビーシッター事件。大変残念ですが、今後の課題に対し有用な議論がなされています。
まず、この事件の本質が経済問題であることを、駒崎弘樹氏が指摘しています。
そして、鈴木宗男氏と乙武洋匡氏のやりとりが、この問題に対する世代間の認識の違いを明確にしました。
鈴木宗男氏、「インターネットで見ず知らずの人に簡単に自分の子供、しかも2歳の幼い子を預ける母親の神経も首を傾げざるを得ない。」
ムネオ日記乙武洋匡氏、「ひとり親で」「近所に知人などもおらず」「経済的に困窮している」方もいる。
鈴木宗男氏への回答「政治家だからこそ、弱者への心配りを」
専業主婦があたりまえの高度成長期は、保育を近所の人々でやりくりするのが普通でした。そのために払っていた犠牲は、コミュニケーションに対する時間・労力のコストです。
それを当然と捉えていた世代は、気持ちや時間的に負担でも、みんながそれをコストと感じておらず、みんながそのコストを払いました。専業主婦が近所付き合いをするのは当然だったのです。
(共働き世帯数の推移、厚労省、2013)
しかし、最近の世代には多様なコミュニケーションが存在し、あえて近所の人や同じ境遇の人たちとコミュニケーションを取らない人も多くなっています。
乙武さんは「近所に知人がおらず」と表現していますが、鈴木宗男さんからしたら、近所に「知人」がいないという状態がきっと想像できないでしょう。
引越ししてきたら、すぐに菓子折りを持って挨拶にうかがい、近所付き合いをして仲間に入るのが常識だったのですから。
コミュニケーションに対してコストを払わない人は、知らない人に金銭を払って預ける方法しかないのです。
あとは、安全性のためにどのくらいの費用を払うか、払えるのかということになります。
しっかりとした施設を頼ることができる方はそうするでしょう。払えない人は、徐々にリスクの高い方法を取らざるを得なくなります。
法規制は有効か
今回の事件を受けて、なんらかの法規制が進むと思います。しかし、経済の問題が大きいことを考えると、根本的な解決にならないことは明らかです。
規制するだけでは選択肢が無くなり、困る人がただ増えるだけです。
保育は市場の需給に歪みがあります。保育園は足りないし、行政は十分な対策ができていません。コミュニケーションのコストを払わない人が急激に増えたことで、この状況が作られました。
明らかに社会に不適格な人間が、なんとか仕事を得てしまっていた。そんな人が、よりによって保育に関わるようになった原因もそこにあります。
不適格な人を未然に弾き出すためにはコストがかかりますし、そういう人にただおとなしくしていてもらうのにも、やはりなんらかのコストが必要です。
根本的な解決は、若い人が払わなくなったコミュニケーションのコストを、どの段階で誰が払うのかを決めることです。
個人に負担させるには限界があり、結局は社会が負担することになるでしょう。
行政の対応
一部には、夜間保育に公的な施設が有るには有るのですが、PR不足というか時代遅れのような状況です。
東京23区・神奈川・千葉・埼玉エリアで、ショートステイ(泊り保育)とトワイライトステイ(夜間保育)に公的施設がある所を全部調べてみました。
軽い気持ちで始めましたが、たいへんわかりにくく、問い合わせも含めて12時間以上かかってしまいました。
多かったケース
・電話のたらい回し
・担当者が不在(わかる人がたったひとり?)
・市などに問い合わせると「無い」との解答 → 他の行政機関から「有る」と言われる
具体的な話
「元々受入人数が少なく、枠がいっぱいになるので特にPRしていません。」
「担当者が不在ですので2日後にもう一度ご連絡をお願いします。」
「ご親戚は頼れませんか?ここは緊急避難的な施設ですから。」
「出張なら、事前に会社の証明書を提出してください。」
「事前登録に平日5時までに来てください。それからの話ですね。」
大阪に両親がいることを伝えると、
「預けられませんか?もしくは、東京に来てもらえませんか?」
・・・
ちょっと、現実の状況と乖離した、信じられないやりとりのオンパレードでした。
ホームページもわかりにくく、PRする気もない。職員にも知らない人がいる。
これでは確かに見つけられません。
現状では、ほんとうは利用してほしくないという本音が見え隠れします。
ショートステイ・トワイライトステイ公的施設一覧
※施設が有るところのみ掲載しています。
※詳細項目は、リンク先のPDFファイルでご覧ください。
(東京23区)
東京23区.pdf
ショートステイ | トワイライトステイ | 問合番号 | |
千代田区 | ○ | × | 03-5298-2424 |
中央区 | ○ | ○ | 03-3534-2103 |
港区 | ○ | ○ | 03-6400-0090 |
新宿区 | ○ | × | 03-3232-0675 |
文京区 | ○ | × | 03-5803-1256 |
台東区 | ○ | ○ | 03-5824-2535 |
墨田区 | ○ | × | 03-5630-6351 |
江東区 | ○ | × | 03-3647-4408 |
江戸川区 | ○ | × | 03-3877-2460 |
品川区 | ○ | ○ | 03-5749-1034 |
目黒区 | ○ | × | 03-5722-9743 |
大田区 | ○ | ○ | 03-5753-7830 |
世田谷区 | ○ | ○ | 03-5432-2526 |
03-5432-2848 | |||
渋谷区 | ○ | × | 03-3463-3164 |
中野 | ○ | ○ | 03-3228-5612 |
杉並区 | ○ | × | 03-5929-1901 |
豊島区 | ○ | × | 03-3981-2109 |
北区 | ○ | ○ | 03-3914-9565 |
荒川区 | ○ | × | 03-3802-3111 |
板橋 | ○ | ○ | 03-3579-2656 |
練馬 | ○ | ○ | 03-3993-8155 |
足立 | ○ | × | 03-3852-3535 |
葛飾区 | ○ | ○ | 03-3602-1386 |
(神奈川県)
神奈川県.pdf
ショートステイ | トワイライトステイ | 問合番号 | |
横浜市 | ○ | ○ | あおぞら045-488-5520
はるかぜ045-849-1877 |
藤沢市 | ○ | ○ | 0466-25-1111 |
川崎市 | ○ | × | 044-944-3981 |
相模原市 | ○ | × | 緑区042-775-8815 |
中央区042-769-9221 | |||
南区042-701-7700 | |||
茅ヶ崎市 | ○ | ○ | 0467-82-8044 |
鎌倉市 | ○ | × | 0467-61-3896 |
(千葉県)
千葉県.pdf
ショートステイ | トワイライトステイ | 問合番号 | |
千葉市 | ○ | ○ | 中央区043-221-2172 |
花見川区043-275-6421 | |||
稲毛区043-284-6137 | |||
若葉区043-233-8150 | |||
緑区043-292-8137 | |||
美浜区043-270-3150 | |||
市川市 | ○ | ○ | 047-711-1736 |
船橋市 | ○ | ○ | 047-436-2407 |
木更津市 | ○ | ○ | 0438-53-2787 |
松戸市 | ○ | ○ | 047-366-7347 |
成田市 | ○ | × | 0476-20-1538 |
習志野市 | ○ | × | 047-453-7322 |
柏市 | ○ | ○ | 04-7167-1595 |
流山市 | ○ | ○ | 04-7150-6082 |
我孫子市 | ○ | ○ | 047-185-1821 |
鎌ケ谷市 | ○ | ○ | 047-445-1141 |
浦安市 | ○ | ○ | 047-351-1111 |
(埼玉県)
ショートステイ | トワイライトステイ | 問合番号 | |
さいたま市 | ○ | ○ | 西区 支援課048-620-2661 |
北区 支援課048-669-6061 | |||
大宮区 支援課048-646-3061 | |||
見沼区 支援課048-681-6061 | |||
中央区 支援課048-840-6061 | |||
桜区 支援課048-856-6171 | |||
浦和区 支援課048-829-6139 | |||
南区 支援課048-844-7171 | |||
緑区 支援課048-712-1171 | |||
岩槻区 支援課048-790-0162 | |||
スターチャイルドみなみ保育園 048-872-1000 | |||
あおぞらウィンクルム保育園 048-782-8716 | |||
川越市 | ○ | ○ | 049-298-4251 |
熊谷市 | ○ | × | 048-524-1452 |
川口市 | ○ | ○ | 048-259-9005 |
行田市 | ○ | ○ | 048-556-1111 |
飯能市 | ○ | × | 042-973-2111 |
加須市 | ○ | × | 0480-62-1111 |
本庄市 | ○ | × | 0495-25-1130 |
狭山市 | ○ | × | 04-2953-1111 |
羽生市 | ○ | × | 048-561-1121 |
深谷市 | ○ | × | 048-574-6646 |
越谷市 | ○ | × | 048-963-9172 |
戸田市 | ○ | ○ | 048-441-1800 |
朝霞市 | ○ | × | 048-463-0364 |
久喜市 | ○ | × | 0480-22-1111 |
吉川市 | ○ | × | 048-982-9529 |
寄居町 | ○ | × | 048-581-2121 |
よくぞここまで調べてくださった。
一度やむを得ない事情(子どもの来院NGの病院で、肉親が手術を受けるために立ち会うことになっていた)で利用しようと考えたときも、本当に預かってくれるのかどうか、子どもが夜中に泣いて泣いて困らせてしまわないだろうかなど、諸々が心配でかなり悩んだ。あのギリギリの気持ちを思うと、公的に受け入れてくれる存在は、もっと広く知られるべきだと思う。
夜間保育してもらえる
公的施設あるのに、
周知されない。
給付金出るのに、
全くと言っていいほど
PRされてない。
できれば使わないでね、
できれば申請しないでね、
と考えているように
受け取れてしまう…
公的なシッタ―機関は、そもそも需要に見合う規模がない。それだけの予算はつけられていないし、国には投入できる原資もない。形だけの中途半端なことをしているのは、批判を避けるためのポーズ。が、これは国のみでなく、保育の大変さとリスクを理解してこなかった国民の側にも責任がある。宗男さんも乙武さんも双方、部分的に正しいのだ。
さらにいえば、ケースバイケースの事情を、全体として論ずることに矛盾がある。実際を知らない正論には、現場を知る人間は辟易するだろう。片親の子育ては本当に大変だけれど、こうした若い母親が覚悟を持って子育てしているか、といえば、残念だが大いに疑問だ。本当に死に物狂いで子どもを守ろうとする母親は、ギリギリの状況でも、子供の命に関わる危険は察知する。制度で対応できることにも、限界がある。今の若者の幼児化、表向き語られない知能の低下などが事件の背景あると思う。