えびさわ由紀

少子化対策の根幹は「婚外子」の権利を認めることから始まる

少子化の要因は実にたくさんあり、複雑に関係しています。
婚外子を認めるか認めないかということも、その一つの要因になっているという意見があります。

日本では法律上、嫡出子と非嫡出子(法律上の婚姻関係がない男女の間に生まれた子ども)の区別があり、権利も同様ではありません。
日本の場合、非嫡出子の割合は2%程度と、世界的にみるときわめて少ないです。
戦前は愛人を持つ裕福な男性がけっこういて、別の家庭を持つことがかなりあったようです。非嫡出子の割合は8%程度だったとされています。
現在はかなり少なくなりました。つまり、出生には結婚が前提になります。

 

 

世界の先進諸国は等しく少子化問題の悩みを抱えていますが、その中で、出生率を回復させた国がフランスとスウェーデンです。
フランスでは1994年で1.65で最低となり、2010年に2.01に回復、
スウェーデンでは1999年に1.5で最低となり、2010年には1.98に回復しています。
二つの国に共通しているのは、法律婚にとらわれず、未婚のまま子どもを産む事が社会的に認知されている国だという事です。

 

スウェーデンにはサムボ(事実婚、同棲)制度があります。
サムボとは、登録している住所を同じくし、継続して共同生活を営み、性的関係をもつカップルの事です。

サムボ法は、サムボカップルが離別する際、経済力が弱いいずれか一方に対して最低限の生活を保障することを目的に、1987年に成立、翌年に施行されました。
この法律では、財産分与や養育権等を規定し、離婚あるいはサムボ解消後も、父親に子の養育費の負担義務があります。

サムボによるカップルはかなり多く、法律婚のカップルの9割以上がサムボを経験しており、お試し期間として機能していると考えられています。
また、サムボカップルに生まれた子ども、すなわち婚外子に対する法律上の差別はなく、法律婚カップルの子と同様の権利が保障されています。

スウェーデンでは2008年、婚外子割合が54.7%と半分以上を占めており、未婚のまま子どもを産む事が社会的に認知されている国と言えます。

 

フランスでは、ユニオンリーブル(自由縁組み)というカップルの生き方が一般化しています。
法律婚にとらわれないカップルが、社会的に認知されるようになった背景には、フランス人の家族観とそれに伴う法の整備があげられます。

1970年に6%だった婚外子が、1980年代半ばから急速に増加し2008年52%に達しました。
さらに第1子に限ってみるとその割合は60%に達しています。
産まれるこどもの半分が婚外子となり、社会的な受容度は高くなっています。
婚外子の法律についても、非嫡出子の権利は嫡出子と同じで、嫡出子・非嫡出子という用語そのものが民法から削除されました。

事実婚が増えると、それに伴い法制度が整備されてきました。

もともと法律婚と事実婚のカップルの間には、税制上の差別を除けば大きな差異はありませんでしたが、1999年にその税制上の差別も軽減する法律が制定されました。これがPACS法です。
共同生活を営むカップル(内縁)を対象に、同性、異性問わずその権利を認めた法律で、PACS契約を締結して2年経過すると、相続税・贈与税の控除が認められ、3年後には税の共同申告も可能になります。

 

国連は、嫡出・非嫡出 にかかわらず児童の権利を保障すべきとし、差別撤廃を求めています。

日本には、民法第900条4号の「非嫡出子の相続分は嫡出子の二分の一」のような法律が未だあります。
撤廃には、「法律婚を守らねば、家族制度が崩壊する、不倫の助長につながる」などの反対意見もでます。
しかし、大切な事は子どもの権利です。

フランスやスウェーデンとは文化も宗教も違いますから、同じような家族観を持つ事は難しい部分もあるでしょう。
しかし、意識や時代の変化に柔軟に対応しながら、多種多様な生き方を認める社会を作っていかねばなりません。
こうした柔軟さが、少子高齢化に歯止めをかけるひとつの作用になるのではないでしょうか。

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