えびさわ由紀

日本の育児休暇制度はなぜ機能しないか〜スウェーデンとの比較〜

安倍首相が育児休暇を3年に延長するよう経済界に求めています。
育児休暇が長くなることは、待機児童問題で子どもを保育所に預けるタイミングを待つ家庭にとっては、選択肢が増えるという利点もあります。
しかし、女性にとっては、必ずしも手放しで喜べるような話ではありません。

現在でも、育児休業中に代わりの人材を確保するなど、追加的なコストが無視できませんから、企業が女性の採用に消極的になるといった問題があります。
もし3年に延長されると、企業側からすると、ますます採用しにくくなるかもしれません。

規制するだけで、噴出する問題に対して工夫しないと、問題が大きくなります。
ただ育児休暇を3年にしなさいというものでは、女性が雇用の機会を減らすだけの結果になるのではないでしょうか。

解決には、男性と女性が同じ条件になるようにすれば良いのですよね。
男性が女性と同様に育児休暇を取得するよう、「男性が育休を取るのが常識」となるような社会にするしくみが有ると良いです。

男女共同参画について、最も参考になるのはやはりスウェーデンです。
スウェーデンは、男性の育児休暇取得率が約80%と非常に高い国です。
日本の男性の取得率は民間企業では2.63%、国家公務員では1.80%です。
日本では現実的に、ほとんど制度を利用できない環境だと言えます。

 


スウェーデンの育児休暇取得率

 


日本の育児休暇取得率

 

元々はスウェーデンも日本と同じように、男性の取得率は女性の取得率の10%と、とても低いものでした。
そこで、取得率を上げるために、1999年、父親専用の育児休暇が法的に作られることになりました。

育児休暇期間の1年4ヶ月のうち、60日はママ専用、60日はパパ専用と決められています。
それぞれ、専用の休暇を取得しないと権利が消滅してしまうので、育児休暇をとる父親が飛躍的に伸びました。

また、育児休業中は所得補償が受けられるので、経済的側面からも重要な子育て支援策であるといえます。
手当額は最初の390日間は働いていた時の賃金の80%給付、残りの90日間は一日約2800円の定額給付となっています(物価水準は日本とほぼ同じ)。
日本では、働いていた時の賃金の最大50%給付となっています。

育児休暇の期間はスウェーデンの1年4ヶ月と比べ、日本の方が最長1年6ヶ月と長いです。しかし、自由度に大きな違いがあります。
日本では一回でまとめて取得する事が一般的ですが、スウェーデンでは子どもが8歳になるまでの間に分割して取得しても良い事になっています。
たとえば、産後1年休んで復職し、小学校入学前後に4ヶ月休むなど、柔軟な取得が可能です。

日本にもこれらを参考にして、育児休暇の期間延長と同時に、男性女性ともに育児休暇を取りやすくなるようなしくみをつくると良いのではないでしょうか。

 

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