議会関連

「国際バカロレア認定校(水都国際中学校・高等学校)」についての質疑

国際バカロレア

橋下徹元大阪市長が取り組みを始めた全国初の公設民営中高一貫校が2年目を迎えています。平成26年、橋下さんは下村博文文部科学大臣(当時)と面会され、公設民営校の設置を可能とする法改正を要望しました。それを受けて平成27年に法改正、令和元年大阪に公設民営の水都国際中学校・高等学校が開校しました。
この学校には、国際バカロレアコース設置が構想段階から検討されており、これまで藤田あきら市議、佐々木りえ市議により質疑されてきました。
今年からいよいよ国際バカロレアコースも開設され、今後のモデル校としての成熟が期待されます。現在の生徒の英語力や、公設民営のメリット、学校運営コストなど、についての質疑をさせて頂きました。

以下のリンクから録画をご覧になれます。
大阪市会録画配信(2020.11.12)

国際バカロレア

<全文>

Q1(海老沢由紀)
昨年4月に開校し、約1年半が経つ水都国際中学校・高等学校について伺います。
本年3月の予算市会での質疑において、本校は、2月に国際バカロレア認定校となり、4月より国際バカロレアコースを開設、高校入学1期生である現在の高校2年生に国際バカロレアの授業を提供することが可能となったとの報告を受けました。
本校は、中高一貫教育校として全国で初めての公設民営学校であり、注目を集めていますが、国際バカロレア認定校となったことから、さらに注目度が高くなったのではないかと感じています。
岩盤規制を打ち破って道筋をつけてきた公設民営という新しいチャレンジと、国際バカロレアコースを開設できたことは、関係者にとっても感慨深いことと思います。
初めての国際バカロレアコースを選択している生徒数と、このコースで学習に取組む生徒の現在の様子について聞かせてください。

A1(大西指導部首席指導主事)
本校では、高校入学1期生80名のうち、現在、国際バカロレアコースを選択している生徒は16名です。
本校では、国際バカロレアコースを選択する生徒だけに国際バカロレアの学習機会を提供するのではなく、国際バカロレアコース以外のすべての生徒に対しても、国際バカロレアの授業を科目単位で選択し、学習することができるよう教育課程を編成しています。
これは国公立、私学を問わず、日本における国際バカロレア認定校の1条校では初めての試みです。
また、国際バカロレアの授業を学習する生徒の様子についてですが、生徒からは、国際バカロレアの学びを通して、考える力、挑戦する力、振り返る力、自己管理能力など、今まで以上に自分が成長しているのを実感しているといった感想が寄せられ、その他にも、数多くの生徒から、主体的に学ぶ姿勢が身についてきたとの感想が寄せられています。

Q2
現在、国際バカロレアコースを選択した生徒が16名とのことですが、もともと希望者は何名いたのでしょうか?
また、国際バカロレアコースに定員があるなら、定員数の根拠と選抜基準を教えて下さい。

A2
現在の高校2年の生徒については、高1の夏頃に最初の希望をとったところ、42名の希望がありました。
その後、国際バカロレアの体験授業や、国際バカロレアコースでの学びについて、国際バカロレア・プログラムを統括するコーディネーターと、本人、保護者が十分な話し合いを積み重ねた結果、16名が選択することになりました。
また、日本の国際バカロレア認定校の1条校では、国際バカロレアコースの定員を、20名程度に設定している学校が多いですが、本校では、可能な限り多くの希望者に国際バカロレアの学びを提供することを目的としているため、国際バカロレアコースに、特に定員を設けていません。
なお、国際バカロレアの授業において十分にパフォーマンスを発揮し、最終試験の合格をめざすために、「国際バカロレアの学習についていけるだけの基礎学力」、「TOEFL Juniorの全ての評価項目において、CEFR B1以上の英語力」の2点については、国際バカロレアコースを選択する条件としております。

Q3
他校では、定員設定がある中で、本校は定員設定を設けていないということは、多くの子どもたちにとって国際バカロレア教育を受けるチャンスが広がることになり、公設民営のよさが出ていると思います。
2022(令和4)年から、高校生については、中学内部進学の80名にプラスして、外部入学の80名が入学するので、生徒数が倍の160名になります。
多くの生徒が国際バカロレアコースを希望し、基礎学力や英語力の基準をクリアした場合、教員の増員が必要になると思いますが、どのように備えていくつもりなのか、お伺いします。

A3
国際バカロレアコースを選択する生徒が増え、開講する授業が増えれば、それに応じて、国際バカロレアの授業を担当する教員の増員が必要になります。
国際バカロレアの授業を教授する資格を得るためには、国際バカロレア機構主催のワークショップを受講する必要があるため、学校に対して、計画的にワークショップを受講させるように指導助言してまいります。

Q4
外国語教育と国際理解教育を重点的に行う公設民営学校である本校では、外国人教員を配置し、数学や理科の授業においても英語を使っての授業を実施していることでも注目されていますが、現在の本校の教育活動における特徴的な取組みについて教えてください。

A4
本校では、公設民営学校としてのメリットを活かし、外国人教員を多数配置し、充実した英語教育をはじめ、様々な国の学生との交流会を企画するなど、授業だけではなく、学校生活全般を通じて英語を多く用いる環境をつくっています。
さらに、本年4月から国際バカロレア認定校としてディプロマ・プログラムを実施しており、国際バカロレアの学習方法である課題解決型学習等により、コミュニケーションスキル、自己管理スキル、リサーチスキル、ソーシャルスキル、多角的思考力を身につけることができると考えています。
加えて、在籍するすべての生徒に国際バカロレアの科目を学習することができるようカリキュラムデザインするなど、学校全体として国際バカロレアの教育理念を基にした教育活動を展開しています。
また、各教科・科目の授業においてICT機器を活用した探究的な学習を積極的に進めることにより、本校の3つの教育の柱である課題探究型授業・国際理解教育・英語教育の充実を図っております。

Q5
本校での特色ある教育活動を通じて、課題探究型授業・国際理解教育・英語教育の充実を図っていることがわかりました。
ところで、今年のコロナ禍において、子どもたちの学習保障のための支援の必要性が学校に求められていましたが、本校では積極的にICT機器を活用し、成果をあげたと聞いています。
どのような取組みであったのかお伺いします。

A5
新型コロナウイルス感染症予防への対応による臨時休業の際、本校では、今年の4月下旬の早い段階からオンラインによる授業を開始し、双方向授業、動画配信による授業等を実施することにより、生徒の家庭学習に対する支援を行いました。
また、本校のICT活用の取組みは、文部科学省の事例報告に取り上げられるなど、多方面からも大いに注目されました。
6月から学校での授業が再開されましたが、コロナ禍の影響から通学に不安を感じるといった生徒および保護者からの声があり、自宅からでも教室での授業に参加できる、ハイブリットラーニングを実施しました。
現在、ハイブリッドラーニングは9月末の段階で終了しましたが、コロナ禍に限らず、今後、生徒への学びの保障のための学習支援を最大限に行う観点から、本校では、状況に応じいつでもハイブリッドラーニングおよびオンラインラーニングへ移行することができる体制を構築しております。

Q6
学校が、突然長期休校になるという、かつて経験がない中で、4月下旬にオンライン授業が開始されたことは、かなりスピーディーな対応だと思います。
教員以外に、ICT専門職員を採用するなど、柔軟な職員配置が可能である公設民営のメリットが活かせた事例ではないかと思います。
さて、我が会派では以前から、「大阪YМCAと教育委員会とが連携し、将来は国際的な舞台で活躍したいという思いを抱き水都国際中学校・高等学校に入学してくる生徒たちの夢が実現するよう学校運営を行って欲しい」とお願いしてきました。
そこで、本校では、卒業後、海外への大学進学を希望する生徒に対し、どのような支援体制をとっているのかお聞かせください。

A6
国際バカロレアコースを選択する生徒については、国際的に通用する国際バカロレア資格を取得させることはもちろんのこと、すべての生徒に対し、英語力を高めるための補講等を計画的に行うなど、学校をあげて組織的な体制でサポートを行っています。
加えて、海外留学に関する奨学金について、民間奨学団体と連携し、生徒に対し申請のサポート等を行うとともに、奨学金の選考での面接に必要とされるスキルを身につけるための講習会を開催しております。
このような体制のもと、来年、高校3年生となる本校1期生が、将来は国際的な舞台で活躍したいという夢を叶えることができるよう進路支援を着実に進めたいと考えています。

Q7
2022(令和4)年の春に初めて卒業生が誕生するが、公設民営学校、国際バカロレア教育を導入している学校としての教育の成果を検証することが必要だと考えます。
国際バカロレア教育(IB教育)の理念は、「探究する人」、「知識のある人」、「考える人」、「コミュニケーションができる人」、「信念を持つ人」、「心を開く人」、「思いやりのある人」、「挑戦する人」、「バランスのとれた人」、「振り返りができる人」の10項目からなる学習者像にある人物の育成です。その上で、生涯にわたって学び続ける若者の育成を究極の目標としています。
国際バカロレア認定校としての成果の検証は、長期的な視点での検証が必要であり、現状では難しい面もあろうかと思いますが、改善点を抽出し、入学希望者の資質とモチベーションの向上を図ることと、国際バカロレア認定のモデル校としての役割を確立するため、卒業時に一定の成果の検証が必要だと考えます。
どのような検証方法が考えられるでしょうか?

A7
教育委員会としては、国際バカロレア認定校としての成果の検証については長期的な検証が必要であると考えております。
しかしながら、委員ご指摘のとおり、高校卒業時において、一定の成果の検証を行うことは、大変重要なことであると認識しております。
そこで、国際バカロレア認定校としての、卒業時の成果の検証指標としては、大きく、「国際バカロレア最終試験の受験者数」、並びに、「国際バカロレア資格を活用した海外や国内大学の進学実績」が考えられると思います。
一つ目の、「国際バカロレア最終試験の受験者数」についてですが、本校が実施している国際バカロレア・ディプロマ・プログラムは、最終試験に合格して初めて「国際バカロレア資格」を得ることができます。
日本において、国際バカロレア認定校が徐々に増加しているとはいえ、国際バカロレア・ディプロマ・プログラムを履修している生徒は少ないのが現状です。
日本における他の1条校では、国際バカロレア最終試験を受験するのは概ね10名程度といわれており、最終試験の受験者数が、国際バカロレア認定校としての、一定の成果の検証になると考えられます。
次に、二つ目の、「国際バカロレア資格を活用した海外や国内大学の進学実績」についてですが、海外の大学では以前から国際バカロレア資格を優遇した入試を行っていましたが、近年では、日本においても国際バカロレア資格を活用した特別入試を行う大学が増えています。
海外大学進学などに、国際バカロレア資格を活用する生徒の数についても、国際バカロレア認定校としての成果の検証になると考えられます。

Q8
国際バカロレア資格を活用し、海外や国内の大学に進学する生徒の数も、成果の検証の一つになるとのことですが、現時点で海外大学への入学希望者は何名くらいいるのでしょうか。
あわせて、本校の高校卒業時の英語力の目標設定と、現時点での高1高2の生徒の英語力がどの程度あるのかを教えてください。

A8
本年9月の調査では、高1が15名、高2が16名、あわせて31名が海外大学進学を希望しています。
また、本校の高校卒業時の英語力の目標については、CFER B2レベルの英語力を習得することを目標にしています。
なお、現段階での本校の高校生の英語力ですが、高1は、CFER B1レベル以上が18名おり、そのうち2名がCFER B2レベルです。
次に、高2ですが、CFER B1レベル以上が21名おり、そのうち5名がCFER B2レベルです。
高1、高2ともに、高い英語力を有する生徒が多くいます。

Q9
水都国際中学校、高校の生徒の英語力の高さに感心する一方で、生徒の英語力に格差があるのではないでしょうか。
格差がある中で行われる授業が、スムーズに進行するのかという懸念があります。
どのようにサポートしているのか教えてください。

A9
中学生につきましては、英語で実施する科目について、日本人教員と英語ネイティブ教員によるチームティーチングで行うとともに、必要に応じて、英語指導助手が授業に入り、英語での学習の支援を行っています。
高校生につきましては、科目によっては、小人数制で授業を行うとともに、中学生と同じく必要に応じて、英語指導助手が授業に入り、英語での学習の支援を行っており、今後は、生徒のめざす進路等に合わせ、理解度別のクラスに編成し授業をしていくよう、さらなるサポートができるように準備を進めています。

Q10
次に、学校運営コストについて質問します。
東京都の教育委員会では、都立学校のバランスシートを作成し、ホームページで公表しています。
作成の目的は、教職員のコスト意識の向上と、教育活動にどれほどの財政が投入され、成果がどのくらいでているのか都民に説明責任を果たすためとのことです。
平成28年度、都立高等学校186校、附属中学校5校、中等教育学校5校のバランスシートから、生徒一人当たりにかかるコストは、約113万円と算出されています。
本校における生徒一人あたりにかかるコストは、他の市立高校と比べてどうなっていますか?

A10
本校を運営する大阪YMCAに支払う年間の管理代行料については、本市が、本校を直営で運営した場合の想定経費を基に算出しています。
開校後、6年間は生徒数が年々増加していくため、年間の管理代行料も年々増加していきますが、完成年度の令和6年度以降の管理代行料についてはほぼ一定になることを想定しています。
現在想定している管理代行料から、完成年度の生徒一人あたりにかかるコストを計算すると、一概に比較はできませんが、本市の全日制高等学校の生徒一人あたりにかかるコストとほぼ同額になると考えられます。

私立高校では、バカロレアコースを選択すると授業料が高額になります。バカロレアコースの導入には大変なコストがかかるというイメージを持つ方もいらっしゃいますが、水都国際では、本市の全日制高等学校の生徒1人にかかるコストとほぼ同額ということです。

(要望)
開校して約1年半が経ちましたが、特徴ある新設校としてこれからが本当の正念場になるのではないかと想像できます。
高校1年生時の、最初の国際バカロレアコースの希望調査では42名が希望していたとのことですが、これは、入学時に国際バカロレアを目標に入学してきた生徒が42名いたと読み換えることができると思います。
実際に国際バカロレアコースに進んだのは16名ということですが、26名の生徒が何らかの理由で選択しなかったという点は、今後の課題の一つといえるのではないでしょうか。
今回1年目ということで、指導の密度を考慮するなど慎重な面もあったかもしれません。
今後を考えると、中学からの入学者についていえば、4年間の準備期間があることになります。
希望する生徒のできるだけ多くが、バカロレアコースに進めるよう、中学時よりしっかり啓発して引き上げていただければと思います。
大阪の公立高校としてはじめての国際バカロレア認定校として、大阪の私立高校を含め、全国の高校をリードしていくようなレベルアップができれば、望ましいと思います。
国際バカロレアの最大の特徴は、学習者である子どもたちが学びの主体となる教育手法でありますが、究極の目標は、国際バカロレアの学びを通じて、生涯にわたって学び続ける若者の育成です。
本校の国際バカロレア認定校としての新たな取組みを、ぜひ本市の多くの学校に普及していただき、生涯にわたり学び続ける子どもたちを、一人でも多く育てていただきたいと思います。教育委員会事務局におかれましては、大阪YMCAとしっかり連携するとともに、最大限の支援をお願いいたします。

参考資料:大阪市立水都国際中学校・高等学校に関する主な質問とその回答(国際バカロレアについて)

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大阪市会録画配信(2020.11.12)

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