海老沢由紀です。
都知事選の候補がようやく出そろったようですが、短期間にいろんな人が出ては消えましたね。
今回の都知事選で面白いのは、自民党が分裂選挙になることだと思いますが、自民党の不可解な候補者の選定について考えてみました。
日本の代表は組織の安定のため「談合」で選ばれる
日本の政治で代表を選出する時に起こりがちなことは、多数決より話し合いを重視するというものがあります。
良い言葉だと「話し合い」なのですが、悪く言うと「談合」です。
立候補により選挙を行うとした場合も、立候補する前に集まり、話し合いによって決まる方が好ましいと考える文化です。
これは、特に自民党において顕著だと思われますが、過去の総裁選挙において、大福戦争や角福戦争などと言われる派閥間の争いがあり、その勝敗が決した後に、永きに渡ってしこりを残した経験などによるものだと考えられます。
組織の安定的な統治体制の構築のため、選挙をせずに、話し合いで決するほうが好まれたのです。
当選何回で大臣にというような慣習も、争いを避けるために好まれる手法です。
こうした組織安定のための慣習は、もっとずっと古くからみると、江戸時代の長子相続の仕組みなども同じ目的です。
跡継ぎ問題で殺し合いになることが多かった戦国時代から、安定した時代に入って、無用な争いを避けるためにできた決まりです。
自民党は55年体制となり、長期にわたって安定政権を続ける過程で、無用な争いで党が分裂したりするのは利益になりませんから、能力評価ではなく、誰もがわかりやすい評価システムとして、当選回数を基準とした仕組みが役立ちました。
自民党では、立候補も自分の思いだけではできません。手順に沿った根回しが必要だったのです。これも組織の安定のためです。
今回の都知事選の候補者選定においては、小池百合子さんが、意識してかしなくてか、自民党独特の手順を踏まなかったことで、執行部と軋轢が起こりました。ルール違反として非難されたのです。
リーダーとして好まれる祭り上げ
日本の統治体制を見ていくと、リーダーとして好まれるのは、強力なリーダシップを持つタイプではなく、調整能力に優れた人物になることが多いのです。
いわゆる「祭り上げ」なのですが、トップにいる人は権力を振るわない方がうまくいき、意思決定は下部組織の合議体制となります。
トップは下部組織の意思決定を追認するようになり、「よきにはからえ」というようなおかざりになりやすくなります。実質的にトップダウンの意思決定にはならないわけです。
祭り上げの利点は、独裁体制になりにくいということがありますが、一方で、意思決定が全体の利益に向かわず、セクショナリズムになりやすいという欠点があります。そして、意思決定に時間がかかったり、まとまった大きな戦略が描きにくかったりするのです。
都議会は、自民党の特定の議員によって、扱いやすい都知事をリーダーとして祭り上げて支えるような仕組みだったようですね。
小池さんと増田さんのリーダー像
小池百合子さんは、今回リーダシップを発揮して、これらの仕組みを破壊し、改革を進めようとしています。
一方、自民党と公明党に推薦された有力候補の増田寛也さんは、どうやら神輿として担ぐのに最適な「おかざり」となって、安定期の無難なリーダーとなるべく、いつもの候補者の特徴を備えているようです。
ついでに他の政党の候補者も見てみると、会見で話された内容などから判断して、みなさん議会と仲良くしたい、神輿型の候補のようです。
今回の舛添さんの辞職で、都知事は2回連続でお金の問題での中途辞職になります。
これを平時と考えるのはいささか無理があり、改革が必要な「戦時」と捉える必要があるでしょう。
わたし自身は、都議会自民党の特定の議員による支配を開放し、まともな仕組みにしようとしていると思われる小池百合子さんのリーダーシップに期待するしかありません。
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