日本は路上喫煙禁止など、屋内よりも屋外の喫煙対策が先に進んできました。諸外国は屋外よりも屋内の受動喫煙防止対策が先に進んできましたが、日本でも改正健康増進法の施行で、ようやく屋内の受動喫煙対策が進んできたところです。
3/4日の代表質問で、我が会派(飯田先生議員)より、全市域での路上喫煙禁止の提案を致しました。松井市長は2025年1月をめどに、市内全域で路上喫煙禁止にする方針を示されたので、本市は、2025大阪関西万博に向け屋外でも受動喫煙対策が進んでいくことになります。
今後、プライベート空間である家庭内での子どもの受動喫煙の被害についても目を向けるべきだと考え、先ずは家庭内での実態調査を行うよう質疑しました。
所管局から、「今後、保護者へのアンケート調査等を実施し、その結果も取り入れながら有効な施策について関係先と調整を行う」と回答をいただくことが出来ました。今後、家庭における喫煙状況についてアンケートが実施されますので、ご協力をお願いできればと思います。
以下のリンクから録画をご覧になれます。
大阪市会録画配信(2022.3.10)
<全文>
Q1.(海老沢由紀)
【大阪府受動喫煙防止条例の認知度について】
2019年(平成31年)3月に「大阪府受動喫煙防止条例」が制定され、2025年(令和7年)4月の全面施行に向けて、段階的に施行が進んできました。
来月(2022年4月)からは、「従業員を雇用する飲食店は客席面積にかかわらず原則屋内禁煙」が努力義務となります。
また、2025年4月から客席面積30㎡(平米)を超える飲食店は原則屋内禁煙となりますが、今年度、大阪府が実施した調査での、府条例に対する飲食店及び府民の認知度について伺います。
A1.(答弁:岡村 健康局健康推進部受動喫煙防止対策担当課長)
まず、飲食店における認知度についてであるが、
令和3年9月に大阪府が実施した大阪府内飲食店への調査では、喫煙可能店における「令和4年4月からの従業員雇用飲食店の原則屋内禁煙」の認知度は45%であり、また、「令和7年4月から客席面積30㎡超飲食店の原則屋内禁煙」の認知度は53.7%という結果であった。
これを受け、大阪府では「飲食店での認知度が十分とは言えないことから、引き続き周知啓発をさらに進めることが必要と考えられる」と調査結果の概要にまとめられている。
次に、府民の認知度については、
令和3年8月から10月にかけて、大阪府が府民への意識調査を実施しており、その結果として、「健康増進法の認知度は72.8%だが、府条例の認知度は30.4%であり、健康増進法に比べて府条例の認知度は低かった。」「府が先進的な受動喫煙防止対策を進めることに対しては、引き続き「進めるべき」と回答した者が73.4%と多かった」と報告されている。
Q2.
【喫煙可能店が感じている課題について】
飲食店さんへの認知度については課題があるようですが、府も全喫煙可能店約2万店に対しリーフレットの送付や一件ごとに電話をするなど、周知に努めていただいているようですので認知度は上がっていくものと思います。
大阪府受動喫煙防止条例は、令和4年4月から従業員を雇用する飲食店は原則屋内禁煙になるなど、改正健康増進法を上回る規制となるため、国に比べて規制が厳しいと批判的な意見も聞きます。
しかし、府条例で上乗せをしているといっても、多くの先進国やこれまでオリンピックを開催した国では、屋内は全面禁煙で、喫煙室を設置する事も認められていません。先進国と比べると緩い状況です。
2017年のWHOの報告によると、公衆の集まる場(public space)すべてに、屋内禁煙義務があるのは186か国中55か国、厚労省のホームページでは2020年時点で67か国となっています。
府のアンケートによりますと、府民としても、「府条例を進めるべき」という認識の方が多いことから、しっかりと周知、啓発に努めて欲しい。
一方で、対策を進めなければならない飲食店についても目を向けるべきと考えますが、
喫煙可能店が大阪府受動喫煙防止条例に対応していくにあたって、どのようなことを不安に感じていらっしゃるのかうかがいます。
A2.
大阪府の飲食店実態調査の概要には、「喫煙可能店における『原則屋内禁煙』の課題では、『経営面での不安 54.3%』が一番多く、続いて『費用の確保 24.8%』といった資金面や『喫煙室のスペースの確保 31.7%』を上げる店舗が多い」とまとめられている。
Q3.
【経営への影響について】
受動喫煙対策でルールが変更されるわけですので、経営面・費用面で不安を感じられることは当然だと思います。
ところで、先日3/2日、大阪府議会では自民党から受動喫煙防止条例の改正が提案されました。新型コロナウイルス感染症の拡大で疲弊している飲食店に配慮が必要だからということで、4月から施行される「従業員を雇用している飲食店は客席面積に関わらず原則屋内禁煙」とすることの見直しを提案されていました。
「従業員を雇用している飲食店は客席面積に関わらず原則屋内禁煙」とするルールは、飲食店で働いている人を受動喫煙の健康被害から守るためのものです。飲食店さんの厳しい状況はわかりますが、飲食店の営業利益や喫煙者の利便性とは関係がありません。
禁煙によって飲食店の売り上げが減少するという状況はあるのか、大阪府の調査結果を伺います。
A3.
大阪府の飲食店実態調査の概要には、「受動喫煙防止対策の営業面での影響は、令和3年度は無回答の割合が増加しており、新型コロナウイルス感染症対策による休業要請等の影響があったと考えられる。」としながらも、調査結果では、「客数」「客層」「売り上げ」について「マイナスの影響があった」と回答した店舗が2割程度あった一方、「どちらでもない」と回答した飲食店は6割程度となっている。
また、大阪府では、「従業員を雇用する店舗の約7割は、既に禁煙等の受動喫煙防止対策が進んでいるが、令和4年4月の条例の一部施行に向け、引き続き、制度の周知、支援策の活用促進を図っていく必要がある。」とされている。
Q4.
現在すでに、新規に開業する飲食店は小規模店舗も例外なく、原則屋内禁煙になっています。また、喫煙室を設置するための費用の助成制度がありますが、喫煙者が年々減少している状況を考えると、将来的には、喫煙室を撤去するための費用の助成が必要になる時代が来るかもしれません。喫煙室を設置することの方がむしろ将来の経営リスクになる可能性もあるのではないでしょうか。
このような飲食店の不安や混乱を招いたのは、そもそも改正健康増進法が骨抜きになってしまったことが原因です。
様々な業界団体に配慮して、喫煙室の設置ができる例外をつくってしまったことで、喫煙できるできないで売上げに影響があるのではないかと心配したり、喫煙室を設置する費用やスペース確保について、飲食店を悩ますことになってしまいました。
ここで、子どもの受動喫煙防止についてうかがいます。
<資料の配布>
資料①東京都医師会発行「喫煙、受動喫煙の最新知識のQA」になります。「海外では受動喫煙の問題はすでに家庭内の問題にシフトしてきている」と記載があります。
子どもは自ら受動喫煙を回避することが困難であり、大人や社会が子どもを受動喫煙から保護しなければなりません。子どもが同乗している自家用車や子どもがいる家庭内での受動喫煙が問題となっていますが、プライベートな空間ということで規制も出来ず、実態も不明です。
「東京都子どもを受動喫煙から守る条例」の制定にご尽力された、岡本光樹(こうき)弁護士によると、「海外では子どもの同乗している自動車内の喫煙に対して罰則を科しているところもあり、罰則を科すことは将来的な理想ではあるものの、日本においては現実問題として、罰則の執行を誰が行うのかなど、国内法との整合性等を図る必要があることから、直ちには導入には困難がある」との見解を示されています。
しかしながら、家庭内における虐待や暴力に対し、近年、児童虐待防止法やDV防止法が制定されるなど、積極的に法的関与していくことが時代の潮流となっているなか、受動喫煙防止対策も虐待防止やDV防止と同様に、一歩踏み込んだ対応が国において必要であると認識しています。
大阪府では「子どもの受動喫煙防止条例」が制定されていますが、プライベートな空間については、どのような位置付けになっているのか。また、条例の見直しに向けて罰則を科すなどの議論があるのか伺います。
A4.
大阪府子どもの受動喫煙防止条例では、全ての子どもたちが安心して健康的に暮らせるよう、住居、自動車等の生活空間や学校、通学路、公園、病院等の子どもの利用が想定される公共的な空間等において、受動喫煙させることのないよう努めることは社会全体の責務であるとされている。
なお、本条例の見直し等について大阪府に確認したところ、「今のところ議論はなされていない」とのことである。
Q5.
【今後の対策について】
日本は路上喫煙禁止など、屋内よりも屋外の喫煙対策が先に進んできました。先ほど紹介したように、諸外国は屋内の受動喫煙防止対策が進んでいますが、我が国でも改正健康増進法の施行で、ようやく屋内の受動喫煙対策が進んできたところです。
先日、我が会派の飯田議員の代表質問で全市域での路上喫煙禁止の提案がありました。
本市は、屋内に加え、2025大阪関西万博に向け屋外も受動喫煙対策が進んでいくことになります。今後、プライベート空間である家庭内での子どもの受動喫煙の被害についても目を向けるべきだと考えます。
本市としては、どのような対策をしようと考えているのかうかがいます。
A5.
委員ご指摘のように、プライベート空間である家庭内での子どもの受動喫煙への対策は課題であると認識しており、何らかの対策が必要であると考えている。
家庭内の受動喫煙防止には、保護者への働きかけ・意識付けが重要であり、引き続き、啓発に積極的に取り組むとともに、今後、保護者へのアンケート調査等を実施し、その結果も取り入れながら有効な施策について関係先と調整を行ってまいる。
(意見・要望)(海老沢由紀)
家庭内の喫煙状況について、アンケート調査等を実施していただけるとお答えをいただきました。
日本で一番早く「こども」に着目した、東京都の「こどもを受動喫煙から守る条例」について、大阪国際がんセンター・がん対策センターの医師らのグループが、条例の施行前と施行後で、家庭における喫煙ルールの変化を分析し条例の影響があったのかを評価しました。
結果としては、東京都民の家庭での喫煙ルールは変わらなかったことが明らかになりました。理由としては、部分的な場所での禁煙努力義務に過ぎず都内全域に規制をかける包括的な屋内禁煙化政策ではないことが考えられるとのことで。また、兵庫県受動喫煙の防止等に関する条例施行によっても、喫煙者の喫煙行動に変化は認められず、喫煙場所が公共施設から家庭のような私的空間に変化したことが示されました。
理念条例だけでは、効果がないことが指摘されています。
今後、本市で実施していただけるアンケート調査等の結果から、先ずは実態を把握し、こどもを受動喫煙の害から守るために何が出来るか、また海外の取組のように、罰則についても情報収集を怠らずに、有効な対策をすすめていただくようお願いします。
☆質疑の模様は、youtube「大阪市会録画放映チャンネル」 でもご覧になれます。
(注)下の動画は、セキュリティの問題で、再生ボタンをクリックすると出てくるリンクからyoutubeのチャンネルに飛びます。