議会関連

児童虐待に関する情報の全件共有についての質疑

2019年10月2日、教育こども委員会で「児童相談所と警察の情報共有について」の質疑を行いました。
きっかけは、9月2日に大阪市で4歳の息子を虐待した母親が傷害の疑いで書類送検された事件がありましたが、その際に、児相と警察の間に情報提供に関するトラブルが発生し、それを問題視した記事がネットに出されたことです。

記事要約
事件の経緯を記述(省略)
児相は当初「第三者からの通告ではなく母親の相談なので、提供しない。児相の指導で解決する」などと数回に渡り警察への情報提供を拒んだ。大阪市と府警は「協定に基づき、怪我の程度が重い場合は共有することになっている」とし、厚労省は「各自治体の判断だが、傷害事件になりうる場合は、迅速に情報共有するのが望ましい」と話している。

この記事だけを見ると児相が悪いような印象ですが、事実を確認しないとわからないので、まず、関係者(記事を書いた記者、児童相談所、厚労省など)からヒアリングすることにしました。

情報収集してわかったこと

記者(電話で聞き取り)

記事には「(児相)が拒む」「(児相)が拒否」などの表現が多用されており、児童相談所が一方的に情報提供を拒否し、警察と敵対しているような印象を受けました。実際はどのような印象を受けたか聞くと、「敵対している感じではない。児相も警察も思いは同じだと感じた」とおっしゃっていた。厚労省へは電話取材し「各自治体の判断だが、傷害事件となり得る場合は、迅速に情報共有するのが望ましい」と担当者から回答を得たとのことでした。

児童相談所(担当者と面会)

警察との協定に基づいて対応した。児童も一時保護し、警察には行状照会というかたちで情報共有をしている。
<詳細>6/8日:母親から虐待相談受理。6/9日:児童を職権により一時保護。6/10:医療機関受診。6/11:受理会議を開催。警察への情報提供については、協定書で定められた重篤な事案に該当しないこと、これまでの経過や外傷の程度、保護者がセンターの指導に従う姿勢をみせていること、保護者からの相談であることなどから、警察へ行状照会とすることを決定。6/12:大阪府警本部へ母親の行状照会を実施。大阪警察本部からは行状照会ではなく、通報としてほしいとの依頼あったが、本事案は重篤事案ではなく、センターの受理会議でも行状照会により情報提供する方針であること、捜査のために情報が必要であれば、捜査関係事項照会であれば応じられることを伝えた。

以上のやりとりがあり、警察が「捜査関係事項照会」(刑事訴訟法197条2項に基づく照会)で、児童相談所が所有する母子の資料を入手した 。

厚労省(虐待防止対策推進担当者と面会)

全件共有を決める権限は?
全件共有を決める権限は、各自治体にあり、児童相談所を設置している自治体と警察が協議をして決める。警察との連携については厚労省が通知を出しているが、しなさいという権限はない。望ましいという言い方になる。地方自治の観点から、厚労省が各自治体を締め付けることはできない。

全件共有を国で決めるという流れになるのか?
→色々考え方があり、有識者の中でも意見が割れており正解がない。現時点で国が全て全件共有に舵を切るという話は出ていない。平成30年7/20関係閣僚会議での3つのルールは政府としての決定なので、全国ルール。
最低でもこれだけは共有して下さいと指導はしている。

今回の大阪市での事案で、捜査関係事項照会で裁判所を通して児童相談所が所有する母子の資料を入手したことについては?
→形式的な手続き。児相としては、重篤な事案にあたらないと判断し、保護者との信頼関係もあるので個人情報を出すことは出来ないから、情報が必要なら法律に基づいて請求して下さいねということでしょう。保護者との信頼関係も守ることが出来る。警察からクレジットカード会社へ個人情報を照会する時もカード会社は教えることができないので、捜査関係事項照会で請求することはよくあること。

社会環境の変化に厚労省として、なにか対応されていることがあるか?
→「189」虐待通報ダイアルを平成27年に短縮した。以前は長い10桁の番号だったが、虐待は躊躇なく通報して下さいという意味を込めてかけやすくした。現在は有料だが、年内には無料化出来るよう調整している。かけづらい要因を減らしていく対応をしている。
面前DVや兄弟への虐待を見ることも、心理的虐待ととしてカウントし、虐待を広くとらえるようにしたことも社会の動きに対応している点。

情報共有にあたっての問題点

児童虐待における児相と警察の間の情報共有に関しては、様々な事情、事例によって意見が分かれ、非常に難しい問題を含んでいます。

<児相と警察の情報共有にともなう問題点>
・相談控えを誘発する
・真実を話しづらくなる
・相談者との信頼関係が崩れる
・関与する件数が多くなることで重大な事案を見落とす可能性
・警察介入後に不起訴になった場合、親がそれを免罪符にする場合がある

厚労省の話がとても重要だと思います。「誰が事態の重篤度を判断するか」に関して、また、権限がどこにあるかも含め法的に対応することが必要になりますから、やはり「形式的手続き」がスムーズに行われ、漏れがないようにする仕組みづくりが重要になると思います。

松井大阪市長は「全件共有する」という基本方針を示しています。これは、児相だけの判断を避けるというねらいがあると思いますが、近頃起こっている事例からしても当然の判断です。総合的に見て、最も適切な対応と思われます。
ただ、情報共有が多くのケースについてプラスだとしても、特定のケースにおいては、副作用と表現できるような事例が発生する可能性があることは間違いないことでしょう。
そのマイナス面が発生した場合に、その都度しっかりパッチをあて、起こってきた問題点も含めて、児相と警察の双方がきちんと事態を共有、対処できるような仕組みを作り、その精度を高めることが重要だと考えました。
事故をゼロにすることは難しいですが、細かく修正を加えることで、減らしていくことは可能です。きちんと機能する仕組みを作ることが重要です。

児童虐待は時代の推移とともに適用される範囲が拡大してきた

児童虐待は、以前は「家庭の問題」とされていました。時代の推移とともに「社会の問題」と捉えられるようになってきたのは、逆に言うと、近所の関係が薄くなり、他人の子供と大人が関わる程度が小さくなってきたことで、家庭が近隣社会との距離を広げてきたからです。近所の子供に気をかける大人が少なくなりました。
子供と家庭の間に何か問題があるときは、家庭や近所に任せるのではなく「公的な社会」がより責任を持って関われなければならないという解釈が広まりました。
「児童虐待」とされる範囲も以前に比べて大幅に広くなり、児相に通報される件数も急増し続けました。児相に割かれるリソースも、それにつれて増やさないと手が回らず、児相がオーバーワークになってきていたのです。
これらのことから、松井市長は児相を4箇所に増やす方針を示されています。大阪市は、時代の変化にあわせてきちんと対応を取っていきます。

質疑詳細

Q1(海老沢)
児童虐待に関連する児童相談所と警察との情報連携について質問します。
児童虐待は、昔であれば基本的に家庭の問題とされ、社会として対応しなければならないという認識が薄かったと思います。その後の社会情勢が変化し、この問題が家庭だけではなく地域社会として対応することが当然だと考えられるようになってきています。
また、ネグレクトや暴力を伴わない心理的虐待など、児童虐待と定義される範囲も広くなり、児童相談所に寄せられる相談件数が全国的にも年々多くなっていることから、児童相談所のリソースも不足しています。
大阪市では、これに対応するため、現在2箇所あるこども相談センターを、4箇所にまで増やす方針が示されています。
そういった状況の中で、警察との情報連携に関しては、これまで児童相談所の一定の判断に基づいて、情報提供されるケースが限られていたわけですが、それも最近では全件共有する方向性が妥当と判断されるように変わってきています。

大阪市では、過日港区で発生した、母親が児童虐待容疑で書類送検された事案について、警察と児童相談所たるこども相談センターとの間で、情報連携が十分に出来ていないという報道がありました。児童相談所と警察の連携不足が指摘されたケースです。
この警察との情報共有については、現在はどのような対応となっているのか、まずお聞きします。

A1(岩田こども相談センター虐待対応担当課長)
こども相談センターが把握した虐待事案についての警察との情報共有ですが、まず、平成22年3月に大阪府警本部から要望書を受けて以降実施しているもので、乳幼児の頭部外傷、骨折等、重篤な負傷事案について、警察の捜査を前提に情報提供を行っています。
さらに、昨年度開催した「大阪市児童虐待防止体制強化会議」における議論を踏まえ、その情報の提供範囲を拡大することとしています。
今年度は、その第1段階として、先ほどのような「負傷事案情報」には該当しないものの、大阪市の共通アセスメントシートによる虐待レベルが、最重度・重度となるもの、中度であって職権一時保護したケースについて、警察と情報共有を始めています。
提供した情報について、警察ではこども相談センターの対応において見逃した内容がないか、という観点でチェックが行われています。
また、警察のほうからは、当該家庭の保護者等の生活安全情報、例えばドメスティック・バイオレンスやストーカーでの取扱いがあるかどうか等について情報を得ており、こども相談センターとして、虐待リスクの高いケースを適切にアセスメントし援助するため有効に活用しているところです。

報道にありました港区のケースは、この今年度から拡大した情報共有部分に該当し、こども相談センターが当該世帯のこどもを職権保護したことから、大阪府警察に対し事案の情報提供を行い、保護者の生活安全情報について照会しております。
警察では、その照会から事案を認知され、捜査を行うために詳細な情報を求めて来られましたが、繊細な内容を含む個人情報であることから、こども相談センターとして法的な手続きに基づく照会と令状に基づく差し押さえをお願いしたものです。
本件に限らず、警察が捜査のためにこども相談センターの情報が必要な場合には、法的な手続きに基づいてお願いしており、それに対してセンターも可能な限り協力しているところです。

Q2
昨年度、当時の吉村市長が立ち上げた、「児童虐待防止体制強化会議」における議論内容をとりまとめた資料を見ると、今後大阪市としても、2年後のシステム化に合わせ、大阪府警との虐待情報の全件共有に取り組むこととなっています。
しかしながら、虐待のレベルによっては、一部を対象外とするような議論もされていたようです。
全件共有にあたってはどのような考え方となっていたのか、また、どこまでの範囲の情報を共有することとなっていたのかお聞きします。

A2
全件共有の目的としましては、警察から保護者の生活安全情報を得ることによる支援の充実と、警察の二重チェックによる見逃し防止の強化が図られるものと考えております。
警察と全件共有する際の情報の範囲ですが、「児童虐待防止体制強化会議」においては、現時点で既に警察と情報共有しているケースや、こども本人や保護者からの相談を除き、虐待として認定した全ケースを共有することとしました。ただし、重度・最重度と判断されたもの、職権保護を行ったケースについては必ず共有の対象としています。

Q3
情報提供の範囲と考え方はわかりました。わたしは、昨今の事例を勘案したときに、全件共有の方向性になることは必然だと考えています。
しかしながら、全件共有の方向性が必然だとして、今まではそうなっていなかった理由があるわけで、それについては全件共有となることに全体として利益があるとしても、一部のケースにおいてその副作用があることが理由になっていたと考えられます。
「児童虐待防止体制強化会議」では、全件共有にあたり、保護者など当事者からの自主的な相談については警察への提供対象から除くことについても議論されていたとのことです。これに関しては、その副作用の部分を考慮した結果とも言えるわけです。
今後、警察と全件共有するとなれば、そのような副作用のあるケースも対象となるのではと考えますが、どのような課題が考えられるのか説明してください。

A3
「児童虐待防止体制強化会議」における議論では、委員が先ほどおっしゃったように、2年後に共有する内容について、児童や保護者からの相談を除くこととしていました。
これは、自ら相談して問題を解決したいと願っているこども本人や保護者の相談について、警察と情報を共有することにより、相談することを控えてしまう心配があるという指摘があったことによるものです。

Q4
今、答弁にあった課題をふまえ、今後、全件共有に向けてはどのように進めていくことになるのか、また市としてその副作用に対する対策として考えておられることをお答えいただきたいと思います。

A4
本市としましては、今後、大阪府警察との全件共有を進める方針にありますが、一方で、吉村大阪府知事が今年8月に設置された「大阪児童虐待防止推進会議」においては、大阪府・大阪市・堺市が同じスキームで取り組むことが必要との発信もされており、今後この会議の中で検討を進めていくものと考えています。
なお、本市として全件共有にかかる条件整備が整い、提供が可能となるのは令和3年度になりますが、現在も、110番通報等により大阪府警察が疑いも含めた児童虐待事案を認知し、当該世帯についてこども相談センターに対し事前照会があった際には、センターにおいて24時間365日対応できる体制をとっていることから、その照会に対してセンターとしての取扱いがあったかどうか速やかに回答をしています。
こどもたちの安全・安心を確保するため、こども相談センターとして、引き続き大阪府警察をはじめとする関係機関との連携に努めてまいります。

要望(海老沢)
社会情勢の変化により、全件共有される方向性が妥当となることは全く正しいと考えます。その上で、情報共有が多くのケースについてプラスだとして、全てのケースに置いて必ずプラスに働くとは考えにくく、特定のケースに置いてはマイナスに働く可能性があることは想像にかたくないわけです。そのマイナス面が発生してきた時に、その都度そのマイナスの部分にしっかりパッチをあてることが重要だと、わたしは考えています。せっかく情報を全件共有するわけですから、起こってきた問題点もそれに含めてすべてきちんと共有し、少しでもマイナス面を少なくできるような仕組みを作って行くことが重要で、その精度を高めていくことが、残念な結果に至るケースを減らしていくことにつながる最も重要なことだと考えます。そういった認識をしっかり持っていただいて、この問題にスピーディーに対応いただくことを要望しておきます。

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