6、東京都の少子化対策

1)都庁に聞く

「少子化対策について東京都の取り組みを知りたい」と、都庁に問い合わせをしましたが、「どこの部署にしましょうか?」と、とまどっているようでした。

たくさんの課がありますが、それぞれ個別の問題に取り組んでいて、他の課のことはわからないようです。

結局、待機児童の問題について聞くことはできましたが、「少子化問題全体のことを総括している課はどこですか?」と尋ねると、特にありませんという答でした。

「それに関しては、担当の課は○○課です」
「それは区がやります」
「そっちは国の管轄なので・・・」

こういう答えを何度も聞くことになりました。
つまり、

少子化対策を専門に考えている部署は都庁には無い!

ということがわかりました。

各部署が、自分の関連する問題だけを個別に考えている。
中心になって、各部署をまとめているところは無い。

縦割り

ここに大きな問題があるように思います。

政治が主導して、まずこういう縦割りのしくみの改革をしないと、効率的な対策が取れるようになるとは到底思えません。

 

2)東京都の少子化の現状

東京都の合計特殊出生率は、長く低下傾向にあり、平成17年に1.00を記録しました。
平成20年には1.09になっていますが、都道府県別でみると、常に最下位です。

一方、就学前児童数は、平成9年以降増加に転じています。
これは、東京都の場合、他府県からの転入による人口増があるためです。

全国平均からみると、現在のところ、東京都の少子高齢化の進行は他府県に比べて若干マイルドだと言えます。

逆に、就学前児童数が増加することにより、保育園の待機児童の問題がますます深刻化しています。

 

25
グラフ25

 

3)東京都では少子化の心配は無用なのか?

現在の状況が、まわりからの転入によって維持されていることを考えると、このままでは近い将来、問題が起こる可能性があります。

まず、転入超過の状態が、いつまで続くかはわかりません。

そして、転出により人口が減っている地域がほかにあるということは、このままでは地域間格差が拡大していくことにつながります。

これが問題だという意見がある一方、人口減少時代には、都市集中の政策を採るべきだという主張もあります。
是非については、国レベルで検討しないといけないことです。

出生率は、常に全国最下位ですから、自然におこるものにせよ政策によるものにせよ、転入が無くなれば少子化の問題が大きくなってきます。

 

4)東京都のための少子化対策

合計特殊出生率が1.09(平成20年)ということは、人口を移動無しで維持するためには、出生率を倍にしないといけないことになります。

これは、普通に考えると、達成はまず不可能だと言えるでしょう。
たいへん極端な政策を取る以外には効果は薄いと思われます。

たとえば、避妊させないためにコンドームの販売を禁止するとか、子ども一人につき子ども手当を月に10万円支給するなどの大きなインセンティブを与えるなど。

24歳までに結婚しなかったら都内から出て行ってもらうとか、18歳になったら親と別居を義務づけるなども良いかもしれません。

冗談に聞こえるかもしれませんが、結果については、専門家も意外に賛成の人が多いのではないかと思います。

さて、現実的なことを考えると、国と同様に、東京都の場合も、地道な家族政策による出生率のある程度の回復への努力と、少子化によって生ずる様々な問題への対処を、両輪で実行していく必要があるでしょう。

 

5)東京都の場合の家族政策のポイント

まず、縦割り行政の改善、つまり公務員改革を国に先駆けて行います。
少子化対策専門の課を作り、補助・育児・男女共同参画・結婚など個別の政策に対し、相互に関連する影響などを検討でき、陣頭指揮ができるようにする必要があります。
今後どういう政策を進めるの検討も、改めてそこで行います。

その上で、十分な予算を付けて、国から離れた独自の制度を充実させる。つまり、国に頼らず、国が逆に参考に出来るような政策を進められるようにすべきです。

東京都の場合は、他の都道府県に比べ大きな財源を持っていますし、規模からすれば、国よりも機動的に動け、効果も短い期間でわかるはずです。

先進の政策をどんどん実行し、国政および他の地方の実験台になるようなつもりで、家族政策の効果測定ができるようにすると良いのではないかと思います。

 

6)東京都の少子高齢化対策は国の政策に影響される

一方、少子化の結果生ずる問題については、転入超過をどう考えるかによって変わってきます。

現在、東京・大阪・名古屋の3都市で、地下鉄の24時間運行を行うというプランが出ています。
これは、世界の主要都市では当たり前のことですが、さらなる都市化が進むという批判もあるようです。

しかし一方で、今後、もし人口が減少することを食い止められないならば、さらなる都市化を進めることにより、成長率が高めるべきだという意見もあります。

自民党は、全国にまんべんなく公共事業をばらまく「国土強靱化」を進めていますが、一方では、3大都市圏と地方中核都市に人口を集中し、公共投資やインフラ整備もコンパクトシティに集約して効率化すべきだという意見の政党がある

わけです。

もし、国が人口の都市集中政策を選択するなら、東京都にとっては、少子化対策をする必要性は小さくなります。そうでなければ、よりいっそうの少子高齢化を想定して対策する必要が出てくることになります。

わたしは、基本的には都市集中政策を採用すべきで、地方分権を進め、地方では中核都市に人口を集めて高齢者対策をすべきだと考えています。

これらの問題は、今後の政治の行方に左右されてくる問題なのです。

 

 

目次に戻る いまやらなくていつやる!日本の少子化対策

 

PAGE TOP