議会関連

性・生教育について、新たな教育センターの設置について 教育こども委員会質疑

医療的ケア児

日本では、毎年12,678人の未成年が人工妊娠中絶をしており、そのうち、1,139人が大阪府内での未成年中絶件数です。(令和元年度の厚生労働省衛生行政報告例)
大阪では、毎日、3人の少女が望まない妊娠により中絶しているのです。

「大阪市子どもの生活に関する実態調査」の結果からは、若年出産世帯に貧困リスクが高いことが明らかになりました。(平成28年度実施)
このような課題を解決するために、平成30年度から、子どもたちが、自己肯定感を高め、自他の命を大切にし、相手を思いやり、集団生活の場でよりよい人間関係を築き、子どもたちそれぞれが自分の将来について具体的な目標を持つことができるよう、「生きる力を育む性に関する指導〜性・生教育」の取り組みがはじまっています。

広がりも出てきている一方で、性・生教育を行う教育現場からは、性に関する指導については、かつて全国的にブレーキがかかり、その影響で何をどこまで教えればいいのか、教えていけないのかが分かりにくいといった声、また、各学校の抱える課題や実情を踏まえた具体的な指導案を求める声があがっていました。

今回の質疑のねらいは、各小中学校に具体的な指導案を示していただくこと、授業の動画コンテンツを作成していただくことの2点です。
質疑の結果、令和3年度中に、小中学校9年間のカリキュラムを見通した指導計画や具体的な指導案の事例を示すことや、授業の動画コンテンツ化など作成を進めていくと明確な答えをいただくことができました。

以下のリンクから録画をご覧になれます。(はじめ~22分です)
大阪市会録画配信(2021.3.10)

性・生教育について<全文>

Q1(海老沢由紀)
国連サミットで採択されたSDGsは2030年までに、持続可能でよりよい世界をめざす国際目標です。貧困、飢餓、環境、経済成長からジェンダー平等まで、17の幅広い課題を解決することを誓い、日本も積極的に取り組んでいます。
17のゴールのひとつに「ジェンダー平等を実現すること」が掲げられています。
例えば「女性及び女児に対する暴力を排除すること」「強制結婚や女性器切除などの有害な慣行を撤廃すること」「性と生殖に関する健康と権利への普遍的アクセス」などが、具体的なターゲットとして示されています。
世界では、毎年300万人の15歳から19歳の女子が中絶しています。一方で、強制結婚により10代の少女の多くが子どもを産んでいる地域もあり、若年妊娠や若年出産も問題になっています。
WHOの2015年の調査では、15~19歳の女性の死因トップは、出産や安全性の乏しい妊娠中絶です。妊娠や出産に対する正しい知識がないことも原因のひとつといわれています。
女性の健康と性の課題は発展途上国により多くありますが、日本も例外ではありません。日本は医療技術も素晴らしく、公衆衛生上はトップクラスですが、性と健康については後進国といえるのではないでしょうか。
日本では、毎年16万人もの女性が人工妊娠中絶をしています。
令和元年度の厚生労働省衛生行政報告例の統計によりますと12,678件が未成年です。また、大阪府内の未成年人工妊娠中絶数は、1,139件です。
このような課題を解決するために、性に関する知識やスキルだけではなく、人権やジェンダー観、多様性など包括的な性教育が求められています。
現在、大阪市の学校では、「生きる力を育む性に関する指導」である、いわゆる性・生教育が行われています。性・生教育を行うにあたり、どのような課題認識を持ち、課題解決に向けてどのように取り組んできたのか伺います。

A1(三嶋保健体育担当課長)
平成28年度に実施した「大阪市子どもの生活に関する実態調査」の結果、若年出産世帯に貧困リスクが高いことが明らかになりました。
教育委員会では、この課題を解決するために、平成30年度から、子どもたちが、自己肯定感を高め、自他の命を大切にし、相手を思いやり、集団生活の場でよりよい人間関係を築き、子どもたちそれぞれが自分の将来について具体的な目標を持つことができるよう、「生きる力を育む性に関する指導」を系統的に進める必要性があると考え、各学校における取組を進めるよう促し、特に中学校には年間3時間程度の取組を進めるよう指導してきたところです。
また、学校が「生きる力を育む性に関する指導」の取組を進めるにあたっては、児童生徒の発達段階を踏まえ、学校全体での共通理解を図り、保護者や地域と連携し、理解を得つつ、集団指導と個別指導を組み合わせて教科横断的に実施することとしています。

Q2
性・生教育については、生野南小学校の取組のように顕著な成果が見られるものもあり、わたくしどもの会派では、このような優れた取組を全市的に水平展開するよう求めてきました。
大阪市立の小中学校では、保健の時間だけでなく、例えば、生活科の時間や家庭科の時間を活用した性・生教育が行われ、広がりが出てきたと聞いています。現在、大阪市の小中学校において、どのような性・生教育の取組が行われているのか伺います。

A2
委員ご指摘のように、「生きる力を育む性に関する指導」である性・生教育については、小学校における体育科保健領域や中学校における保健体育科の教科書を使った授業以外にも、生活科や家庭科、道徳の時間等を活用した教科横断的な取組や、特別活動の時間に独自の取組を行う等、本市の学校において、子どもたちの発達段階に応じたさまざまな取り組みが行われています。
小学校において、多く行われている取組の主な具体例としては、1・2・3年生の低学年を中心に、体を清潔・大切にすることやプライベートゾーンの指導、自分の誕生や成長を知り、命の大切さを考える指導が行われており、4・5・6年生の高学年を中心に、生命のつながりや家族・家庭生活・男女の協力についての指導、心の健康についての指導、働くことを考える指導、犯罪や性被害から身を守るための指導、夢を実現する生き方や働くことを考える指導などが挙げられます。
また、中学校の具体例としては、1年生を中心に、かけがえのない命を考える指導、2年生を中心に、デートDVや男女交際、性の多様性、男女の協力やお互いを尊重する精神ついて考える指導、3年生を中心に、性情報・性被害について考える指導が行われています。

Q3
大阪市の小中学校において、さまざまな性・生教育の取組が行われているとのことでした。
このように、さまざまな取組が行われ、広がりも出てきていますが、一方で、性・生教育を行う教育現場からは、性に関する指導については、かつて全国的にブレーキがかかり、その影響で何をどこまで教えればいいのか、教えていけないのかが分かりにくいといった声、また、各学校の抱える課題や実情を踏まえた具体的な指導案を求める声があると聞いています。
現場の抱える障壁を取り除き、各学校がスムーズに指導できるよう、教育委員会として、今後、小中学校における性・生教育の指導力を引き上げるための支援を、どのように進めていくのか伺います。

A3
各学校において、コロナ禍を踏まえた学びの保障とともに、今後、新しい学習指導要領を踏まえた主体的・対話的で深い学びに取り組んでいく上で、各学校の実情実態に即した「生きる力を育む性に関する指導」についても適切に進めていくことができるよう、教育委員会として、改めて取り組むことの意義やめざすべき目標、さらに校種間のつながりや児童生徒の発達段階を踏まえるといった「生きる力を育む性に関する指導」の基本的な考え方等について分かりやすく示してまいります。
令和3年度については、生野南小学校とその進学先である田島中学校の取組のような、他の学校の参考や模範となる取組をもとに、小中学校9年間のカリキュラムを見通した指導計画や具体的な指導案の事例を示すなど、各校における実践がより円滑に進むよう検討を進めてまいります。

Q4
取り組むべき意義や目指すべき目標などについても示していくとのことですが、実際に包括的な性教育を行なった世界各国での多くの調査をレビューした分析では、適切なカリキュラムに基づく包括的性教育によって、「性行動を活発化させない」という実証結果が出ています。
たとえば、初交年齢が遅くなる、性交渉の頻度が減る、性的パートナーの数が減る、リスクの高い行為が減るなど、ポジティブな結果がでています。
以上のエビデンスからも、本市が抱える「10代の人工妊娠中絶が多いこと」や「若年出産世帯に貧困リスクが高い」などの課題解決に向け、取り組む意義は大きいといえます。取り組む意義や目標について、関係者の皆さんで共有することで、理解が深まっていくと考えますので、わかりやすく示して頂くようお願いします。

今後、各学校における実践力の向上を図るため、指導案を示していくとのことですが、授業の動画コンテンツであれば、どの学校でも均等に質の高い授業を提供することができ、また準備等の教員の負担を減らすことにもつながります。
さらには、教員自身が、動画コンテンツを繰り返し視聴することで、学びにもつながり、その後の指導力を高める効果も期待できると考えます。指導案を示す際には、様々な効果が期待できる優れた授業の動画コンテンツ化について、あわせて進めていただけますか?

A4
教育委員会においては、この間、様々な教科・領域において授業動画のDVDを作成したり、配信しているところです。
委員ご指摘の「生きる力を育む性に関する指導」を進めるための授業等の動画コンテンツを始めとする指導教材については、関係課と連携し作成を進め、各学校のニーズにあわせた活用が進むよう取り組んでまいりたいと考えております。

(要望)
動画コンテンツの作成も進めていただけるとのことでありがとうございます。また、令和3年度には小中学校9年間を見通した指導計画や、指導案を示していただけるということですので、市内全域に広げていくようお願いしておきます。
今後、指導案を示していく際には、教育委員会の教育関係者の専門知識を結集いただくとともに、外部から、ジェンダー、人権、健康・医療、子どもたちを取り巻く環境や子どもたち特有のリスクある行動などについて、詳しい専門家の方々にも参画いただき、よりよいものにしていただきたいと思います。
国際的な性教育の指針となっている「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」では、幼児から青少年まで発達段階に応じた適切な年齢に性教育を実施することを求めています。そういったことも参考にして、小学校の性・生教育がより一層充実したものとなるよう、今後、取組を進めていただきたいと思います。

医療的ケア児

「新・大阪市総合教育センター(仮称)」の設置について<全文>

Q1(海老沢由紀)
新たな教育センターについて伺います。この間、私どもの会派から、一般質問や、教育こども委員会の場で、複雑化・多様化する教育課題を抱える学校現場への支援として、教育センターの機能強化や、教育課題の解決のための「シンクタンク機関」の設置の必要性を指摘してまいりました。
先日の代表質問におきまして、我が会派から藤岡議員の質問に対し、市長が「大学の敷地内に産官学が一堂に会することができる施設を設置することで、相乗効果が発揮され、より効果的に教育課題へ取り組むことが期待できることから、大阪教育大学の天王寺キャンパスに、大阪市の教育センターも移転する」と答えております。
来年度、具体的な設計に着手すると聞いており、施設内には、大阪教育大学が協定を結ぶ複数の企業の共同オフィスも設置されるということです。
新たな教育センターはどのような機能が強化されるのか、スケジュールも含めあらためて伺います。 

A1(比嘉大学連携企画担当課長)
新センターは、現在教育センターが担っている研修機能や学校現場への指導要請に加え、施設内で大学や企業等と連携することで、研究機能、分析機能を強化し、学力向上や不登校、外国籍児童・生徒への日本語指導など、大阪市独自の課題への対応を進めるとともに、教員の資質の向上をめざす総合教育センターとなることをめざしている。
若手教員の増加に伴う研修の充実や、新時代に対応する教育内容の研究・開発が求められる大阪市と、高度な職業人としての教員養成をめざす大阪教育大学が協働し、大阪教育大学天王寺キャンパスの敷地内に連合教職大学院と合築で設置するものであり、このような合築施設の設置は全国でも例をみない取組みである。
スケジュールは、来年度から基本設計、実施設計に着手し、令和4年度、5年度に建設工事を行い、令和6年度に開設の予定である。具体的な事業内容としては、先端技術を導入した学力データの分析やICTを活用した教材開発、また、学校現場の課題の解決に結びつくような研究を進めてまいる。

Q2
答弁いただきましたように、ICTなどの活用については、技術の進歩もはやく、教育委員会や大学だけではなく、企業との連携も大切であることはこれまでも指摘してまいりました。開所に向け具体的な検討を進めていただくようお願い致します。
教育センター自体が大学の敷地内に移転するというのは、全国でも例をみない取組みということですが、このような施設の設置は全国初ということになるのでしょうか。また、設計に着手するにあたっての、具体的な施設のイメージについても教えて下さい。

A2
大学の連携という観点では、多くの自治体が取り組んでおり、教員研修を大学において実施している例も珍しくない。
シンクタンク機能の観点では、埼玉県戸田市がエビデンスに基づく政策立案を推進するため、令和元年度から教育政策シンクタンクを設置し、効果的な教師の指導方法をデータをもとに明らかにしたり、それを政策立案にいかしたりする研究に取り組んでいる。
ただ、この新教育センターのように、自治体の教育センターが大学院と併設され、同一施設内で大学教員と現職の小中学校の教員と企業の人材が交流しながら研究、実践を行うという事例は前例がないと思われる。
新しく設置する施設は、1階から5階が連合教職大学院、6階から10階が新教育センターとなる。新教育センターの方は、現在の10,000㎡という規模から3000㎡とダウンサイジングになるものの、オンライン対応や大学施設の活用で工夫を図る。
また、動画コンテンツ作成のためのスタジオや、オンラインによる相談対応が可能となるような施設機能の充実を図る。
さらに、大学院との合築施設としての強みを活かし、教員・指導主事・大学院生・大学教員が集まる研究・交流スペースの設置や、企業の協力を得ながら最先端の教育に触れることのできる未来型教室の設置等も検討している。

Q3
この間のコロナ禍が象徴するように、予測困難な社会にあって、教員の負担は大きくなる一方であり、その負担を軽減して、本来の子どもの教育に専念するために、教員自身が高度な学びを得る環境を整えることは大変重要なことです。
また、採用後の教員へのサポートが充実していることは、現職の教員はもとより、教員をめざす学生にとっても大きな魅力となることと思います。この新教育センターでの新たなチャレンジが、大阪市の教員の確保にもつながることと期待しています。
ただ、今年度、早急にオンライン学習の必要性が迫られたように、先行きが不透明な「予測困難な時代」への対応は、令和6年度の新センター竣工を待たず、今まさに必要とされているスキルです。
現在の取り組みを開設に向けて強化していくことで、このような喫緊の課題へ対応することもでき、開設時には施設の相乗効果を最大限発揮できると考えますが、開所に向け、今後どのように進めていくのか伺います。

A3
委員ご指摘のとおり、学校現場をとりまく情勢はめまぐるしく変化しており、さらに新型コロナウイルスの感染拡大など先行き不透明な「予測困難な時代」に対応するためには、令和6年度の開設を待たずして、連携の取組みを具体的に進めていくことが重要である。
今年度、学校現場の抱える課題に大学の研究を融合させる取組みとして、大阪教育大学とコロナウイルス感染拡大にかかる学校現場での課題についての共同研究のプロジェクトを立ちあげた。
また、大阪市の教育が抱える喫緊の課題に対する研究を、現場の実践と往還させながら大学と共同で研究を行う「教育センター拠点校」を設置する予定であり、その具体的な手法等について、来年度から検討する予定である。
このような取組みを通じて、大学と企業がそれぞれの強みを活かし、様々な専門的能力が一同に会することで学校教育を取り巻く様々な変化に対応できるという新センターの相乗効果が十分発揮できるよう、開所に向け取り組んでまいる。

(要望)(海老沢由紀)
ありがとうございます。
国の方針として、エビデンスに基づいた教育政策が求められている中、コロナ禍により、ICT化が進んだことで、膨大なデータの蓄積や分析が行いやすくなり、よりエビデンスベースの政策を立案できる環境が整ってきました。
先行して教育シンクタンクを設置している他都市では、学力データの分析や課題解決のための研究を進める中で、課題も見えてきていると聞いております。部局を横断した取り組みの難しさ、データポータビリティの向上の必要性、個人情報保護の配慮など、制約される場面があり、分析のスピード感に欠けるといった課題もあがっているようです。
新しい教育センターの役割が大いに発揮できるよう、他都市とも連携し、課題を克服しながら進めて頂くようお願いしておきます。

☆質疑の模様は、youtube「大阪市会録画放映チャンネル」 でもご覧になれます。

(注)下の動画は、セキュリティの問題で、再生ボタンをクリックすると出てくるリンクからyoutubeのチャンネルに飛びます。

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