医療に関する風当たりが強くなっていて、とりわけ「医師会批判」が強いようなんですが、今の医師会にはそんなに力は無いと思うんですけどね。
確かに昭和の時代は、医師会の集票力が大きかったですし、地方(田舎)で当選して集まり、権力をふるっていた多くの自民党国会議員は、医師会の力を借りていたようです。
でも、今では自民党の議員もそんなに重視していないようですし。まあ、普通にどこの団体にも良い顔しようとするのが政治家です。
どの業界にも利益団体はありますから、どうして医師会だけみなさん必死で批判するのかとは、ちょっと思います。
そもそもなんですけど、医師会批判については、皆さんは誰を批判しているつもりなんでしょうか?
医師会って言って、医師全体を批判している気になっている方がほとんどだと思います。金儲けしやがってとかね。
でも、ほとんどの「若い医師」は医師会に意見も言えないし、言う気も無いですよ。
だから、医師会の中身は、意思決定している人は、きっとある程度の高齢者で、保守的な考えを持っていたり、今までの伝統を踏襲しようとする人だったりでしょう。
医師会批判は、みなさんが気付いているかはわかりませんが、高齢者批判と似たようなものかもしれません。
だから、医師会批判を受けた若い医師が感じるのは、「なんだかみんな医療批判して、こんなに頑張ってるのに報われないなあ」と言うことです。
労働基準が変わって、当直しても勤務時間に含まれなかったり、そんな中でそれこそ身を削って社会に奉仕しているのに、批判ばっかりされて、年々報酬は厳しくなる。やってられない。
そこで、若い医師がどういう行動をとるかと言うと、「直美」。ナオミじゃないですよ。チョクビ。
直美問題と言うのが近年取り沙汰されてきました。
卒後、まともな医者を目指さずに研修もそこそこで保険外の医療に従事する問題。
今の若い人の多くは個人主義です。少なくとも、ある程度の年齢層からみたら、そう見えます。
それが悪いとは思いませんが、若い医師も例外では無いわけで、医師だけが社会貢献を求められてもかわいそうです。
当然のように、コスパ?タイパ?が良い仕事に向かい、きつい仕事にはいきません。
少数派になった社会貢献派は、ますます大変になり、最終的に離脱して行くでしょう。このままでは。
産科など24時間体制が必要な仕事も、ひとりでやらねばならなくなるかもしれません。
時間外なので、とか断れない仕事です。
明日早いので、後日連絡します。も通用しない。
若い人からしたら、なんとかハラスメントにあたるような仕事じゃないんでしょうかね?
批判はいいですが、気楽に言ってることが、どういう結果をもたらすかという洞察力は必要だと思います。
お腹が痛くて大変、って時でも、あー開いてないから明日来るしかないなあ。とか、
ある程度の田舎だと、近所に開業医がいなくて、バスで30分先の大病院に行かねばならないとか、
イギリスみたいに、事前に決められた病院しかかかれないとかね。
今の政治の意思決定次第では、そういう未来になることもあり得るわけです。
自分たちの手取りが減って生活が苦しいなどになると、誰かに責任を押し付けたくなるのは人間の特性ですが、医師に責任なんて無いですよ。グローバルに見たら、医師の給料は少なすぎで、過酷な労働過ぎです。
一部のひどい医者の例だけ見て、全体に当てはめることは不毛だと思います。
さて、維新の会はOTC(オーバー・ザ・カウンター)と呼ばれる薬局で買えるようなお薬を保険適用外にする事を提案しています。
財源の話と考えてる方もかなり多いようですが、これはちょっと違っていて、モラルハザードの問題です。
もし、軽い病気になって医院に行くと、軽い病気でも薬を保険内で処方されます。基本的に0~3割負担です。それを10割負担で買ってもらうという話ですね。
でも、本当に必要な薬であるなら、10割だって買うしかない。
だから、「必要な薬だけ処方されている」という前提ならば、最終的に国民全員の負担は変わらないのですよ。
保険経由のお金は減っても、ならせば、みなさんから出ていく負担は変わらない。
それを、みなさんが「なるべく薬をもらわない・買わない」という考えにしたい。
今までだと、「念のために薬をください」って病院で言ってましたよね?聞かれたら。そうですよね?気楽に。
聞かれなくても、「薬飲まなくてだいじょうぶかなあ」と思うでしょう。
「あそこの病院は薬も出さなくて、ちゃんと診てくれなかった」とかとか言ってる人の話、聞いたことないですか?
そう言われるのが嫌で、ほんとはいらないけど、と思いながら医師も出します。おまじないみたいなもんです。
「足痛い」って言われたら、とりあえず湿布を出します。
かかる側にも医師側にも責任がある。
それを「いりません」「高いので」となるようにしたいからです。
念のための薬が家に余っている。こういう無駄をなくしたいのです。
維新の会の政調がどういう意味でこれを出しているかは、わかりませんが、本来はそういう目的です。
同様に、たいした病気じゃないのに、気楽に病院に行くな。
実は、これが医療制度改革の本質に近いと思うのですが、そういうほんとうの無駄を減らす以外に、医療費の削減は無いんです。
重篤な病気になったときに、高いから病院行かない。これは無いんですよ。
そして、効果がわからない治療。
これも、まったくの無駄とは言えないが、贅沢のたぐいになるでしょうか。医療費が足りないのに保険適用はできないはず。
「効果がはっきりしている治療」だけを残して、「効果がないが患者が望む治療」も保険からは無くしていかねばならない。
医療DXが必要なのは、これをはっきりさせるためです。
しかし、勘違いしない方が良いのは、医療がデジタル化すれば、すぐにこういうのがはっきりするわけでもないこと。
医療DXの効果は、長い検証の末に、未来に結実するんであって、今の予算を減らさない。
現在の財源確保の中には入りません。
このモラルハザードの問題に対しては、いくつかの代替案もあります。
たとえば、全世代に対して3割負担に統一する。子供もです。
そして、いったん負担してもらって、本当に必要な人や子供分だけ、あとで給付する。とか。
医療費が高いということを、いったんは国民全員に自覚してもらう。
これも、財源確保のための政策変更だと思われてしまいますが、モラルハザードの話です。
この3割負担のことは、前回の衆院選前に、維新の会の医療制度改革PTに参加して意見しました。
しかし、子供の負担に関しては、全く相手にされなかった。
老人3割負担も、積極的な賛成意見を述べたのは、当初はわたしと音喜多さんだけでした。
医療政策で言うと、質、コスト、アクセス。この3つを考えねばなりませんが、
みなさんは、どの要素を削ったら良いと思いますか?
コスト、というのは、多くは医師の報酬です。
これ、知っている人にはこれ以上削ったらどうなるかわかっている。
この記事の冒頭で書きましたね。
削ったら、もれなく質の低下、アクセスの低下が付いてきます。
わたしは、アクセスを削るしかないと思ってます。
好きな病院に好きなようにかかるという「贅沢」、フリーアクセスは、少なくとも保険診療では今後無理でしょう。
あと、病院も今は赤字の病院ばかりなので、統廃合されて行きますから、田舎にはなくなるしかない。
田舎に住んでたら、都市部に通うしかない。遠くても。
さて、少しだけ高額療養費の話をしたいと思います。
間違ってたら申し訳ありません。わたしが聞いたのは、当初は政府から突然出されたものだと。
だとすると、おそらくは役人が出したわけですが、これ、どう思いますか?
わたしの所にも「吉村さんに会わせてほしい」っていう方が来ましたが、吉村さんがいち早く苦言を呈したので、そのせいかどうかわからないけど、どうやら改善に向かうらしいですね。
「社会保障の負担を減らせ」「減税もしろ」って、皆さんは言ってますよね。雑に野党をくくると。
それが政局になっている。
選挙があるから、政治家は有権者の顔色をうかがって、こういう話になりやすいです。特に野党は。
そこで、私の勝手な想像ですが、こういう時にいつも嫌われ役になるのは役人ですよ。
政治家からも国民からも無理難題を言われる。
今回もそうじゃなかったのかなと。
社会保障の負担を減らして、減税もします。そうしたら、こういうことが必要です。
それを、みなさんがはっきり自覚できる形で出してきた。
どうせ反対にあって潰れるのはわかってるけど、一回明らかにしようとした。
役人をかばいすぎでしょうか。
吉村さんの言うように、これは問題がありすぎます。
特に、がん患者の方。
もし、高額療養費の改正が何の反対も受けずに進んだら、主にがん患者のような重症患者の方だけが負担をかぶることになった。
全体の利益のために、困っている一部の方だけが不利益を被ることになった。
そんなことは、この民主的で道徳的な社会の中でありえないことですよね。
わたしは、一回こんな話になったことは無駄ではなかったのかな、と感じました。
みんなで真剣に考えましょう。医療のこと。
橋本龍太郎総理(当時)が 1997年の参院厚生委員会で答弁した28年前、既に国民負担率の上限や高齢者と現役世代の公平感について議論されていました。
「国民のみなさんがどの程度の医療でご満足いただけるかが問題」とマスコミの前で語っています。当時は小泉純一郎氏が厚生大臣です。
これは谷垣貞一さんの著書に書いてあることですが、維新の会の最初の国政挑戦になった、2012年の民主党野田首相(当時)の解散は、「社会保障改革」をめぐる自民党との合意のもとに進んでいった話だそうです。
超党派で実現しなければならない重要課題だと意見が一致したからです。
今さっき始まった議論ではないのですから、政局に流されるだけではなく、しっかりやりましょう。
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