議会関連

脱炭素社会に向けた学校施設における環境配慮の取組みについて 教育こども委員会質疑

脱炭素社会に向けた学校施設

脱炭素社会の実現を目指すことが国際社会のコンセンサスとなる中、学校などの建築物についても環境に配慮した建築が求められています。建築物は一度建てると、長期間使用されるものですので、直ちに対策を講じないと、その影響は2050年を超えて続くことになります。

公共施設の建築においては、これまでの環境配慮の取組みをさらに前進させるものとして、ネット・ゼロ・エネルギー・ビル、いわゆるZEBの普及拡大が進められており、2030年までに新築の建物の平均でZEBの実現を目指すとの方向性が示されています。 
ZEBとは、「施設の大幅な省エネルギー化を実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、エネルギーの自立度を極力高め、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目標とした建築物」のことです。

2025年に大阪・関西万博の開催を控える大阪市は、積極的にZEB化をすすめるべきであると考えます。今後新設や建て替え時期がくる学校施設においては、ZEB化のモデル調査など、カーボンニュートラルに向けての取り組みを進めるように求めました。

以下のリンクから録画をご覧になれます。(14分38秒〜32分です)
大阪市会録画配信(2021.3.15)

脱炭素社会に向けた学校施設

<全文>

Q1(海老沢由紀)
脱炭素社会にむけた学校施設における環境配慮の取組みについて質疑をさせていただきます。
昨年10月の臨時国会における首相の所信表明演説では、「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラル即ち脱炭素社会の実現を目指す」と表明され、先日3月2日には、この内容を踏まえた地球温暖化対策推進法の改正案が閣議決定されました。
昨年7月にアップルが2030年までに生産段階でのカーボンニュートラルを実現すると発表、同年1月にマイクロソフトが2030年までにカーボンニュートラルよりもさらに一歩先を行くカーボンネガティブを実現すると発表するなど、「脱炭素」の条件をクリアすることがビジネス参加の最低条件となりつつあります。
そのような中、学校などの建築物についても環境に配慮した建築が求められる時代に変化をしてきました。そこで、まず、本市の学校施設において、環境配慮としてこれまでどのような取組みを行ってこられたのか、伺います。

A1(洞教育委員会事務局総務部施設整備課技術管理担当課長)
学校をはじめとする市設建築物につきましては、その設計や工事を所管する都市整備局において「市設建築物設計指針(環境編)」が策定され、環境配慮技術の導入などに取り組んでおります。
学校施設における具体的な環境配慮といたしましては、新築や増築工事等におけるLED照明の積極的な導入や、トップランナー機器をはじめとした省エネルギー性能に優れた設備の採用、さらには、校舎の屋上部分における外断熱の導入や、「大阪市グリーン調達方針」に基づく環境負荷の低減に資する材料の採用などに取り組んでおります。
また、平成29年度より、環境局において、再生可能エネルギーの普及拡大及びエネルギーの安定供給に向けた分散型電源の確保を図ることを目的として、民間事業者による学校の屋根を利用した太陽光発電事業を実施してきております。
・その結果、教育委員会事務局が自ら設置したものと合わせまして、236校において太陽光発電設備が設置されております。

Q2
学校への太陽光発電設備の導入は、化石燃料による発電割合を低下させ、本市が排出するCO2の削減に大きく貢献するものです。
先ほどのご説明で、学校に設置されている太陽光発電設備には、環境局設置によるものと、教育委員会設置によるものがあるとのことですが、それぞれの違いと設置状況について、もう少し詳しく教えてください。

A2
環境局の屋根貸しによる太陽光パネル設置促進事業は、低炭素社会の構築を目的に、再生可能エネルギーの活用拡大を図るため、学校施設の屋根の目的外使用による民間事業者の力を活用した事業であり、現在、182校に設置が進められております。
また、学校教育や環境学習にも資するよう、屋根貸し事業を実施した各学校には、太陽光発電の発電量をグラフ等で示すテレビモニターが設置されております。発電した電力は、平常時は全て売電される事業スキームとなっておりますが、災害時や計画停電時などの非常時には、太陽光発電による電力を使用できるように、防災コンセントが設置されております。
一方、教育委員会事務局設置の太陽光発電設備は、児童・生徒に環境問題に対する意識を高めて学ぶことを主たる目的として、現在、84校に設置しております。屋根に設置された太陽光パネルで発電した電力を学校内で使用している照明、コンセントなどの電力に接続され、自家消費しています。
また、災害時等の非常時には、一定の操作が必要とはなるが、職員室に設置しているコンセントから太陽光パネルで発電した電力が使用できるようになっています。

Q3
本市においても、様々な環境に配慮した取り組みを進めているとのことです。
今まさに時代は脱炭素社会や再生可能なエネルギーを活用した新たな生活を模索している中、公共施設の建築においては、これまでの環境配慮の取組みをさらに前進させるものとして、ネット・ゼロ・エネルギー・ビル、いわゆるZEBの普及拡大が進められていて、2030年までに新築の建物の平均でZEBの実現を目指すとの方向性が示されています。
ZEBについてもう少し詳しく説明すると、「施設の大幅な省エネルギー化を実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、エネルギーの自立度を極力高め、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目標とした建築物」のことです。
本市の施設についてもZEB化を進めるべきだと考えますが、大阪市の施設に関して、現在、ZEBがどのように位置づけられているのかうかがいます。

A3
本市では、SDGs達成目標である2030年度までを計画期間とした新たな「大阪市環境基本計画」が令和元年12月に策定されておりますが、その中で、市設建築物における環境配慮の推進として、「更なるCO2の排出削減を図るためZEB化の実現に取り組む」と位置づけられております。
また、この3月2日に公表されました「大阪市公共施設マネジメント基本方針」におきましても、「大阪市環境基本計画」の改訂を受け、「市設建築物においては、省エネルギー化やZEB化にむけた取組を進めるため、再生可能エネルギーを利用する技術や、エネルギーを有効利用する技術など、様々な環境配慮技術を経済性や施設特性も考慮しながら導入していく」と位置づけられております。

Q4
本市では2025年に「いのち輝く未来社会のデザイン〜持続な可能な社会・経済システム」をテーマに国際博覧会が開催されます。
未来社会の実験場として、最先端技術を発信する場になりますが、最先端技術を発表したとしても、脱炭素化に進もうとしていなければ、世界から大阪を見る目は厳しいものになると思われます。
ただいまの答弁にあったとおり、「大阪市環境基本計画」や「大阪市公共施設マネジメント基本方針」においても、市設建築物におけるZEB化の取組みが位置づけられているとのことで、学校施設においても、積極的にZEB化の取組みを進めていって欲しいと考えます。
そこで、学校施設においてZEB化を進めるうえで想定される課題についてうかがいます。

A4
学校施設において、ZEB化を推進するにあたっては、さらなる施設の省エネルギー化を推進する必要があることから、断熱性に優れたガラスや外壁素材の採用、日射を遮る庇の設置、さらには、ガス式の空調設備から電気式の空調設備への転換などが必要となってくるが、いずれも建設費の上昇につながるものであり、予算面における課題がございます。
また、ZEB化の達成にあたっては、省エネルギー化の取組みに加えて、太陽光発電設備に代表される、再生可能エネルギーの導入が大きな要素となってくるが、本市の学校施設は校地が狭隘なものが多く、また、高層建物が隣接しているケースも多いことから、効果的な発電に適した太陽光発電パネルの設置場所を確保できるかといった課題もあります。
しかしながら、環境により配慮した施設整備は、委員ご指摘のとおり今日的な課題であり、昨年度、環境局におきまして「市設建築物のZEB化導入に向けた調査」が実施され、平成22年度に新規に開校いたしました鶴見区の焼野小学校をモデルケースとして、学校施設におけるZEB化に向けた検討が行われたところです。
教育委員会事務局といたしましても、文部科学省をはじめとした国の動向を注視するとともに、環境局や都市整備局と連携しながら、今後、新築する校舎における新たな環境配慮技術の試験的導入など、学校施設におけるZEB化推進の可能性について、検討を進めてまいりたいと考えております。

Q5
国もZEB化を推進するために、様々な支援を提示していくものと思いますので、本市として遅れることなく取組みを進めるようお願いします。

さて、先日、本市では初めてとなる義務教育学校が設置されることが決定しましたが、この義務教育学校については、ソフト面・ハード面に渡り、時代が求める課題に応えるような教育内容・教育環境のモデルとなるシンボリックな学校になることを願っています。そういった意味で、本市の学校施設において初めてとなるZEB化を、義務教育学校で、取り組んでみてもよいのではないかと考えます。
先ほどの答弁で、学校施設のZEB化に対する課題が説明されましたが、老朽化した体育館を立て替える時期に、まずは体育館のZEB化を目指すことはできないでしょうか。簡単な構造である体育館であれば、ZEB化の可能性も高まるのではないかと考えます。
そこで、体育館におけるZEB化の可能性についてうかがいます。

A5
体育館につきましては、現行の標準設計におきまして全面的にLED照明を導入しているため、照明設備につきましては、ZEB化に必要な対応はできているものと考えられます。
また、空調設備の導入を行っている中学校の体育館におきまして、ZEB化をクリアするためには、エネルギー効率に優れた電気式の空調設備の設置が必要となってくると想定されます。
しかしながら、中学校体育館の空調設備につきましては、災害発生等における停電時の稼働が必要であるとして、ガス式の空調設備を採用していることから、電気式の空調設備の設置は難しく、クリアすべき課題が大きいと考えられます。
さらに、空調設備を設置する場合には、屋根や外壁、窓ガラス等の断熱性を向上させることもZEB化をクリアする上で必要になると考えられますが、予算面における課題がございます。

Q6
「課題があることは理解した上で「ZEB化できる可能性があるのか」ということを質問させていただいております。
施設ごとに可能性判断の調査ができるので、義務教育学校の体育館にかかわらず、本市の学校で、建て替え時期がくる体育館なども視野に入れ、モデルケース的に調査をかけてみるなど、行動すべき時期ではないでしょうか。
建築物は一度建てると、長期間使用されるものですので、直ちに対策を講じないと、その影響は2050年を超えて続くことになり、カーボンニュートラルの達成はできません。
世界中がゲームチェンジを求められている状況で、脱炭素化は避けては通れないことが、世界中のコンセンサスになっています。先日開かれました、内閣府の「再エネ規制総点検タスクフォース」から、ZEBに関する提言がありましたので、一部引用させていただきます。

「公共建築物は率先してZEBを目指すべき。公共建築物においては革新的技術が活用できるフィールドとしての役割も大きく、積極的に実証実験を実施して、結果をモニタリングしてフィードバックするといった貢献が求められる。そのためには、ある程度のコストアップを許容して予算の確保が十分できるような措置が求められる。新築、既存改修ともに積極的に推進していくべき」という内容を、地方自治体の建築物にZEBが導入されるような国の様々な支援の必要性とともに、提言がなされていました。

教育委員会としては、どのような認識で取り組んでいくのか、最後に教育次長に伺います。

A6(多田教育委員会事務局教育次長)
先ほど、担当課長からの答弁にもありましたが、「大阪市環境基本計画」や「大阪市公共施設マネジメント基本方針」において、市設建築物における環境配慮の推進としてZEB化への取組みが新たに位置づけられるなど、本市におきましても、今後、カーボンニュートラルに向けた取組みが本格化するものと考えられます。
また、文部科学省においても、本年1月に「新しい時代の学校施設検討部会」が設置され、新しい生活様式やカーボンニュートラルを見据えた、令和時代の学校施設のスタンダードについて議論が始まったところです。
教育委員会におきましては、平成29年度に「大阪市学校施設マネジメント基本計画」を策定し、ライフサイクルコストの削減や財政収支の平準化を図る観点から、施設の長寿命化などに取り組んでおりますが、学校施設に対して刻々と変化する時代の要請についても、適切に対応していくことが重要と考えております。
近年、エコスクールという言葉が聞かれるなど、環境に配慮した公共施設整備は、学校施設におきましても全国的な課題として認識されており、委員ご提案の、今後の施設整備におけるZEB化のモデル調査なども含めて、大阪市の学校施設としてカーボンニュートラルに向けて何ができるのか、関係部局と連携しながら前広に検討を進めてまいります。

(要望)
前広に検討を進めていただけるということですので、国際的な潮流に遅れないよう情報収集をしっかりして頂き、大阪市としてできる事を進めて頂きたいと思います。
市の建築物において脱炭素化を進めることは、建築業界や様々な業界の技術革新にもつながり、新たなビジネスチャンスも生まれることと考えます。良いことばかりではなく、これまで蓄積してきた技術を捨てねばならない企業など、淘汰される技術やサービスも出てくるなど痛みも伴うと思います。
大きな産業ひとつがそのままそっくりなくなってしまうほどの、大きな変革の時代に生きる、本市の子供たちにとっても、学校施設が建物ごと脱炭素化に取り組むことは、環境問題やエネルギー問題について学ぶ大変良い機会になると思います。

全市で初めて設置される義務教育学校をはじめ、その他の学校施設の、今後の整備においては可能な限り柔軟な手法で整備を進めるよう要望しておきます。
以上でわたくしの質疑はおわります。

☆質疑の模様は、youtube「大阪市会録画放映チャンネル」 でもご覧になれます。

(注)下の動画は、セキュリティの問題で、再生ボタンをクリックすると出てくるリンクからyoutubeのチャンネルに飛びます。

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